詩集
【詩集】
ゆうがたにえらぶ
ぬのにかくれたなまえを
もどって、そのひとをよむ
行を追えばかわるときがあり
みえかくれするかおも
いっときのあかし
なきましたか、どうですか
おのれではないもので
うしろがみちていて
みえるのはただ先頭のみ
これまたうらがなしい
舟のさだめみたいに
遅愛
【遅愛】
やがてそらからのもので
あつみだらけとなり
情さえうすくにごるのに
ながめるともなくいて
あらずともなくさらにいて
とおくまでたどろうとし
ちいささのこのなかで
みずからをかきいだくよう
あゆみをゆっくりさせる
あいしかたをまなんだのだ
速愛にたいする遅愛も
もはらからだのめぐりから
陸続
【陸続】
あるきに枯葉がまといつき
あしがなくなってゆく
なにをもってみずからを
ふたえにするかで
とおくのぞむまなこもある
ふる、とつぶやく
ひとしなみに地表へ
おうごんがもられるので
このよるもさかずきなのだろう
べつのなにかは去った
わたしならひとのつづきを
ゆるがすものにすぎない
他生
【他生】
ふちのまるさに
このよのにわをさげ
めぐってゆく椀がある
うまざけがきいろく透き
ゆめをゆれている
まるさはひとの不足をいう
だからこそのみくだしに
なみだのあじがするが
天上もうつっている
のどには他生をとおす
面前ことごとくおぼつかず
衆がまっとうされる
交換
【交換】
よながのけはいが
ねどこにまでふかいりし
籠と似たひとはきぜつする
うちがそとへおよび
ねすがたもたわむ
りんかくは流星をはなち
いえぬちがてらされる
詩行ごとの陰陽のように
ひとはつづいてゆく
あるべくあまれたのだ
しずくはもうないが
こうかんがいまだあって