ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

あるか

 
【あるか】


遠くが鳴っている
鮫島に鮫があふれたそうだ
けれども刃向かうものもないので
死亡通知をこの左手で受けとる

あれを返す「この」。
これを返す「あの」。
みだりに水は

嘆願も森に入ったとおもう
神輿が捨ておかれて
中断は途上からのながめ
そういうものを形見分けの
なめらかな段取りでふかめる

けれども心太にある
あかるいけむりのアイス欠乏
箸をもつ深傷もかたむいてゆく

生理前の いわしの行進
聴像がなまぐさいのは
せまい自覚のせいだ、

私をわたしで割って
マトリョーシカの
入れ子かんおけ
(舌に裏はあるが
西もあるか

なまおよぐ風の繁栄だ
三日おきに手足の柱は
入れ替えてゆこう
鮫島に鮫がおぼれる

蝋涙のさむさを
眼で海の極へ流して
私はこの丘にあるか
すこしずつ
あるか
 

2008年05月17日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

自転車に乗って

 
【自転車に乗って】



飛ばなくちゃならないものを
投げる手前で断念する
私を ピアノ線を複雑に織り込む

あげていたいドブ川の川風に
深夜の洗濯物がひるがえれば
ヘッドホンのなかから木の実が
脳髄灯せと転がってくる
ころん、の寸前の 棒体脱色

川風の脇 自転車を乗る
川風のひとりとして自転車を乗る

軍属、両手一杯に呟く
「阿部山くん」「はい」
「阿部沢さん」「はい」
地上の四の五の。
継続だけでなく配置が問題で
むなしくなれば夜が
私の管を伸びた けれど

みみずの一種だって、自転車は。
ひからびて死んでいるよ、
あけがたからちょっとの間に

「おまえを鉄の味方のなかに
リボンをつけて
蔵わなきゃならないね

好きなひとは好き
と自分を騙し討ちして
線のためにも
自転車を漕ぐ

すいっすいっ、と
コーンは帰り道にこぼした
 

2008年05月15日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

mixi田中宏輔さんの卵シリーズに書き込んだ卵の詩歌句




卵にも十戒ありて闇割るる





ノアの舟卵を運べりそこ火星





プロミスト・ランドは千の鶏に千の卵を抱かしめる風





卵帝の回想の黄身あかねさす





見し卵の下なる千の卵かな風の爪弾き「カノン」を奏づ





若きネロよ汝が驕慢の美(は)しければのみどうるほす卵を禁ず





このひと日卵として生く彼方には風に溶けあふ黄身や白身や





卵殻の真粗き肌理を憎みゐてこの乱心を磨き温めむ





卵料理の卵の香りふるとしは母を火刑に処してほほゑむ





食べ過ぎし卵のゆゑにはつなつは鶏の貌して泪し死なむ





割れやすさ吾(あ)にも累卵にもありて恋は錆びたる銀杖振るふ





箔のごと卵を焼けり薄闇は闇うすくして黄金(こがね)の予感





熱もたぬ焔のままに卵炎ゆこの眼のなかに殻ちりばめて





幽界の卵三つが朧ろにて





一卵を考へ世界の卵おもふ地上なべても水引きし湖(うみ)





悪徳は卵形をなす球もちて露ぶかき野を恨み歩けば





闇はひくたびに
黒い泡の代りに
黒い卵を鳩尾においてゆく
鳩尾に
びつしり並ぶ
黒き卵

2008年05月14日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

「未定」提出「光」十句

 
泣き喰ひの飯のひかりや予後五年



蓮華光彼我の境が指標かな



薄明に眼鏡ひかりて毬藻持つ



瞑れば画光音光書物光



かなぶんが光る万象鬱の網



列をなすひかりや摩利支天国来



喜捨尽きて篠つく雨も光かな



ギドギドと笑ふ光や雷魚獲る



満身の枯葉の光をいかにせん



晩春光棘も鬼哭も春のうち
 

2008年05月14日 現代詩 トラックバック(0) コメント(1)

脇差以下五句

 
脇差や本日の顔ヒトラー似



半死後に坂東太郎と酌み交す



喫煙はけむりと消えて春野褪す



魔術中消去魔術を是とするも



馬毛服の細身うつくし木槿彦
 

2008年05月11日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)