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現代詩 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

現代詩のカテゴリーです。

くちなわ

 
 
【くちなわ】


おおくの朝がかさなっているひむがしに
ひとつの顔があらわれて朝がとろける

うたってきたのはひとのからだところも
ならば木立すべてがなすのもからだなのか

ゆるやかに眼路には木蔭ができてゆく
樹影がしるくなるのにややゆきおくれて

けれどはじめのながさはどこかへきえる
これが朝とくゆうの不具なのかもしれない

紐を提げひむがしを負えばわがところに
ほうがくの影がのびてくちなわがさびしい
 
 

2013年07月10日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

福音

 
 
【福音】


しょせんは肌と肉と器官とで顔はあるのだが
このありきたりによりかたちはうつくしい

福音まちからすこし背をかがめてあらわれる
ひとのちかづいてその顔も福音とおぼえる

なによりも眼がゆうべにあって夕のようだ
からだにひそめている自同のせいかとおもう

どんなことばを発するのだろうとみがまえて
それでも期待される声が無音でしかありえない

やがてちいささがすれちがい夕をゆききってゆく
この世の顔すらみえがたくなって福音も絶えた

あることがきえてゆくそれを星の法則といってみる
夕刻の数分のみまなかいには宇宙があらわになる
 
 

2013年07月03日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

子規庵

 
 
【子規庵】


ゆびさきを嗅ぐとするめのにおいがして
さてなにへふれたかとおぼつかずうたがう

いつかのたまさかおのれの痰にふれたのだ
めぐる体汁が陽に干されてちいさな塊をえた

この塊という字の瘤のようなものさびしさ
それは身中の珠であり身また葭簀の家だ

おのれへ隠れておのれあらしめる身隠しが
ふるさびる痰をふきあげる閑暇をぬぐう

ありようは夏草のさわり痰でひかっている
膿よりもかわくこの物にひだからの由来ある
 
 

2013年07月02日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

冥加

 
 
【冥加】


まひるまのふづくえに冷奴の方体をおき
顔から食べ物へと正下のかかわりをつくる

たちまち四角いものにとらわれてコレハ亡ビ
ひとが食べ物に似るなどひどい迷信にすぎない

とりわけしろいけむりをのぼらせるふるえが
けずりがつおや生姜茗荷をうねらせている

ひかりがおりる。ほんとうに食べるのは
そこにあるものではなくそのとぐろなのだ

このみだれへ塩をふる侠が父とよばれ
ゆめじみた排泄までただ冥加をつたえる

たべるとはぼろりぼろりと座をくずすことだ
斎へ豆腐をはこびこんだ者におぞましいうす青
 
 

2013年07月01日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

 
 
【四】


さくらばのいえの暗がりの門から
むすめたちのでてくるのをまつ

きょうはどちらをみぎにしようか
ふたごであることは果実ににる

すこし酸っぱいにおいがただよい
くだもののふかいおくゆきがわかる

どちらかを弑すればともにない
平衡のさなかを傲然とあるき

あねであることの髪をなでて
いもうとのまゆげをあおくする

ちぶさのよっつある大仰な同道
ひとり多いむだがほこらしい
 
 

2013年06月28日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)