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ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

コミュへの今朝の六句

 
●コミュ「色彩論」に書き込んだ三句


斑猫の飛ぶ道ながき虚となりて



色すなはち空なり味噌に絵の具溶く



オカリナとふ女を吹いた朝(あした)まで




●コミュ「悲劇の誕生」に書き込んだ三句


瓢箪や世界ふたつの金剛力



菰を着て猶予だらけの尿(しと)姿



羅(うすもの)の世に黙(もだ)通す鬼なれば






サイト句集は駄句を整理した。計20句。
 

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2008年06月29日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

寂光以下六句

 
寂光の汝をのの字に挿しまはす



微細なる地異が詩にあり霊の筆



滅亡は薄の旨か逢魔道



鉄錆に秋視ておのれ裏返す



月給は真烏賊のたぐひ沖熾ん







馬上に小さき花国ありて塵うらら




最後の一句はなにぬねの?の僕の句日記に
柴田千晶さんが付けてくれた句の返し
 

2008年06月28日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

馬から鹿へ

 
●なにぬねの?コミュ「悲劇の誕生」に書き込んだ句


馬の背が西風(にし)にただ沿ひ馬上消ゆ



洗馬(せば)なせば散熱ののち時明かる



山海に読経ひびけば馬放つ



うま肉を蕪(かぶら)と焚いて生(よ)の納め



馬頭らを野に斬り落し文字(もんじ)舞ふ




●今朝のオリジナル句


鹿恋うて疎林に紅き乙女の火



西郷星肥後を揺れゐる肥後消えん



蒙からむ髪膚流せず花を喰ふ



見ぬ夏よ机に来てゐるあすの蠅



欧といふ緩衝地ありなづき奥




●盛田志保子のmixi日記「今日の出来事」に書き込んだ一首


高井戸はどこぞと翁その場所は天に水穴穿つ浄域
 

2008年06月28日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

南回帰線

 
【南回帰線】


すべなくて日暮れて
ましら森が白骨する
身だしは装身にして
露天の湯気きゅうでん
奇な場所を歩いたなあ
おんなの桃捌きに
初音をふと茹でられて
きんたまがこがねを
ゆらりとどこおった
大好きだ、ねじまわし
赤龍頭巻かれて
過去過去の偲び返し
しとどオペラズロースも
和讃の輪角形なるかも
だから葱は和える
赤坂が雨の国道なら
ひん剥いて贄もすぎない
がんもどき思想のおでんだ
ぐつぐつと盗み見て
前戯とどまざれば
LSもドさいけの蟻落し
おきしふるペンペンに
寸前を自慢してらあ
飛べないくせにな
孔雀、その内側のみが
はかなく写幕に映る


(最後の二行は
森川雅美のお題即興詩「孔雀」から
インスピレーションを得た)
 

2008年06月26日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

午前のコミュでバトル勃発

 
●なにぬねの?コミュ「悲劇の誕生」に書き込んだ七句


人面鳥玉露を木霊す谷の梅雨



鳥どりに色散らばりて檻の楽



昼の火の透くを黄泉路へ手紙する



紫陽花の目刺並べん鈴ヶ森



詩を焚けばニーチェの泣きを馬車の追ふ



ホト走る女の滝に邦割るる



嘶くは馬の発端あきつの日




●盛田志保子のmixi日記「PUNK HOUSE」に書き込んだ一首


ワセリンを荒れ喰ふどんらん六月は狂ひくるひて鼠の毛艶す





今日未明は作句作歌が少なかったので
書き込み報告は明日にしようとおもっていたのだが
近藤弘文さんが僕のコミュへの投句に
果敢に返句してきて、
以後、短インターバルでの句作の応酬となり、
30分くらいで六句の完成となってしまった。

その傍らでナンセンス歌もつくっていて
駄句をなしたのではと不安。

うち「ホト走る」は句中「森」を「邦」に替えた。
即きすぎが明白だったので。
しかしいい齢をした大人が午前に在宅しているから
こんなことにもなる(仕事、あったんだけどなぁ。。。)

ともあれ今朝は詩歌句が揃い踏みして
天候不順なれど気分がよかったりする。
いまはシャワーあがりで躯もほかほかだし
 

2008年06月26日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

ナンセンス歌

 
YOUくたるワイキキにはぜはまなしてキキモラふふむもんどのすけも



まどろかしまどかなゑんをくるまきてつるまきにすむででむしがすき



ぼんのうがぼのぼのかすむへそのしたきのふのきりもきらきらきゆる



はるはげんげのげんしょうフェノミナみなのしゅうみのにはしりてみさををすくへ



かながはのあらゆるかはやわうごんをかなたながしてさがみさやさや
 

2008年06月26日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

カーブ讃

 
【カーブ讃】


語尾ライラック
たまなりヘンを喋る
われらの夜餐
たえず自信なげに
犬ふたなりて
上目遣いに
性差万別の笑い
脚萎えの静脈は
きれいなものだ
女滝も墜ちて
水盆がしゃんぱん
しゃわしゃわして
焼身自殺のように
見ていたなあ
部屋空間を
平泳ぎすれば
手で掻きこんだ
俤が顔を攻める
夏の盲愛の海
まるで接続したようだ
現にトルソー、
曲線だらけじゃないか
ここはカーブです
カーブというのは美しい
燃えている
鯨の糞も。




(※ラスト2-4行は
mixiモリマサ公の詩篇、
「カーブ」からの引用)
 

2008年06月26日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

船乗りの唄

 
【船乗りの唄】


海上は大円盤、
あをく異な全景に向け
あたひするものをあたへんと
わたくしを差しのばすと
恵寵のやうに
わたくしの光度差には
すきとほる鰭がつく、
至心を放るのか
刺鍼で裏を隠すのか
背信の先などどうでもよくて
あたひするものをあたふ、
このわうごん事が
減つてゆくわたくしをして
はなあかる湿りで
うすく霑ほしむるものだ。
広大ゆゑ夏瘠せするだらうが
往昔が拠つて字割となる
無際八方は
たとひ薄目でも
ひたに目指す。
波は繰れよ
 

2008年06月25日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

今朝は15句書き込んでしまった

 
●「なにぬねの?」の自分の日記に
近藤弘文さんが書き込んでくれた句への返し


牛頭さがす天比古としてけふ霧散




●同じく柴田千晶さんが書き込んでくれた句への返し


青梅雨をただ縦に身も流るるや




●「なにぬねの?」コミュ「色彩論」に書き込んだ二句


土佐絵金出目金金の濫用也



片恋の左に砂金こぼれゐて





●「なにぬねの?」コミュ「悲劇の誕生」に書き込んだ二句


蜘蛛智慧を帖にゑがきて開かれず



糸詩この蝶緊縛の内紛や





●「なにぬねの?」近藤弘文さんの「過去の習作」シリーズに
順に書き込んだ句


釘打てど水に雑踏のみ残る



今生を千倍せんと秋の角



手の用途不明になれば石榴もつ



白黴のとほい光の媼かな



電線はかぎる飛行(ひぎやう)の行末を




●連打される田中宏輔さんのミクシィ思考メモに書き込んだ句


猫の自死見し眼に泛ぶ月下微塵



山鳥の山衰記かもランドセル



蝦として加齢した夜の泪声



股間潰れ存へる眼が闇感ず





未明にもそもそ起きだす。
仕事をしようとおもってのこと。
ただ起き抜けにはSNSを開く。
開くと作句の誘惑がごまんと待ち構えている。
で、インスピレーションの赴くままに上を。
とうぜん仕事は後置された。
だが幸福なのかもしれない。

けさはもうひとつあった。
stさんの日記で
土本典昭さんの逝去を知り衝撃を受ける。
至近距離に何度もいたのに
怖くてほとんど話せなかった。
7月4日に出る僕のマンガ評論集、
その高野文子の章には
土本作品への言及もある。
供養となるのか
 

2008年06月25日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

マンガ評論集に因んだ八句

 
往暗は日傘の影の淡きゆゑ



I字架にげんざが来てゐる都府末期



難獣に眼の模様あり消ゆるまで



針山に触るる舌もて愛震ふ



スープとし熱もつ美女の唇(くち)を盗る



吾(あ)よりなほ自死見届けよ滝のまち



過渡ならば光あふるる二児ヶ原



思ひ出の南方ひくく南雲あり
 

2008年06月24日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

今朝書き込んだ六句六首

 
●近藤弘文さんのコミュ「悲劇の誕生」に書き込んだ二句


昼蛍その場を占めて予兆かな



霊長の数千流れて提灯夜




●近藤弘文さんのコミュ「色彩論」に書き込んだ二句


ははきぎに影なくともいへ夜叉に遭ふ



酌むいまは花影もなし鬱勃堂




●タクランケさんの「なにぬねの?」日記に書き込んだ一句


最後にて鯉ひるがへる虹の朝




●近藤弘文さんの「なにぬねの?」日記に書き込んだ一句


濡れすぎし鴉のゆふべ仁愛は




●盛田志保子さんのミクシィ日記「散歩の達人」に書き込んだ一首


あぢさゐに楽音ひそむ雨中にて円き淡彩ほどけゆくかも




●田中宏輔さんのミクシィ日記「たくさんの傘」に書き込んだ一首


傘も黄泉の迅(と)き浮花の移りかなはじめに恋ひし俤ははや




●谷口由一さんのミクシィ日記「複数の手」に書き込んだ一首


書く右手(めて)を左手(ゆんで)が支ふ謂ふなれば私一人に二川流れる




●依田冬派くんのミクシィ日記「愛の場面」に書き込んだ三首


空白を積載しても荷台には真昼が匂ふやうだ夏来る



夏をゆき専(もは)ら二人となる先に河口ふたつの並ぶ奇異あり



わが黙(まだ)を繁るにまかせ愛しきを髪消ゆるまで後朝に剃る
  

2008年06月24日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

昨日は

 
昨日はまず未明に
三村京子の「ラララ」曲に歌詞を入れた(音楽実践演習用)。
曲がポール・マッカートニーを累乗させたような感触。
良い曲なのだけど、どうも明るすぎて
いまの気分では歌詞が載せられない。

歌詞、一行目ははじめ「恋するジラフ」と聴え
アフリカの色彩を満面にちりばめようとしたのだけど
以後、挫折を繰り返す。
やがてハッと気づく。
「恋するモドキ」とすればいいのだ、と。
それで20代半ば、東京の恋愛人間の疎外を
複雑な陰翳で歌詞に盛ることができた。

昨日はその後、女房と録りだめしていた
ドラマのまとめ見に入る。

●「キミ犯人じゃないよね」
大好きな深夜カルトドラマで
貫地谷しほりは日本の若手随一のコメディエンヌだし
要潤のおバカ演技も最高、
コンビネーションも、決め科白も、抜群だったんだけど
最終回とその前何回かのホンが甘かった。
一応、謎解きものだからハッとする展開がないとねえ。

●「ホカベン」
上戸彩のスポコン弁護士ものとして始まったこの番組、
あまりに彩いじめがキツすぎて何度か挫けそうになったが
ラスト二回、ずっと前振りされていた北村一輝の
トラウマとなった事件を扱う核心部に入る。
その北村さん、弁護士バッチをかけて
所属事務所に叛乱。
しかも上戸が北村の罪を糾弾することで
弁護士の社会的意義を一切逆転し
しかもそれをひそかに北村自身が助力するという
意想外な展開となる。
「ありえねー」と女房と叫びながら
しかし北村のカッコよさに陶然となる。
見ごたえがあった。
戸田奈緒がこのごろ好きだ、と気づく。
ひかり事件の弁護団への反感がドラマの底流にある。

●「ハチワンダイバー」
将棋もの(真剣師テーマ)なので
深夜の地味ドラマなのに見ている(配役的なことね)。
アホらしい、とおもいながら
演出のケレンとテンポが只事ではない。
こちらは4回目まで観たところ。

そのあいまにSNSのコミュや日記に書き込みをした。
以下は例によって備忘録を。



●近藤弘文さんのコミュ「悲劇の誕生」に書き込んだ二句


渤海を沈めて冷える一人風呂



海岸は定(き)まらず昨日(きぞ)やひるがへる




●近藤弘文さんのコミュ「色彩論」に書き込んだ三句


水盆に金句散りゐて空威ある



愛恋は赤長須たれ水亡ぶ



白濤が谺の数や牙めぐる




●田中宏輔さんの日記「音には意味がない」に書き込んだ歌


時と場所ふりさけみれば束をなし音そのものに意味も沁みだす



●松本秀文さんの日記「細胞さまのお怒り」に書き込んだ歌

細胞の老化しるくて胞核の位置ひかり吸ふ病葉の群れ
 

2008年06月23日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

昨日今日書き込んだ七句+一首

 
●近藤弘文さんのコミュ「悲劇の誕生」に書き込んだ句


眸を見ず飢ゑもかがちも気配消ゆ



蕎麦屋みち隠れののちに古稀見せん




●近藤弘文さんのコミュ「色彩論」に書き込んだ句


破蓮のむかうにひそと墨の邦



古代朱の弁舌さみし鷽(うそ)の舌



鬱血や羹(あつもの)こごる緑金に



銀緑の常世を鹿は凡走す



暗(あん)流す関八州の川の海苔



●盛田志保子のミクシィ日記「燃え尽きつつも。」に書き込んだ歌


狂ひだし後ろ歩きのこの梅雨は長歌の円に身が近づくも
 

2008年06月22日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

なにぬねの?コミュに書き込んだ10句

 
また書き込みが10句になったので。

●「なにぬねの?」近藤弘文さんのコミュ
「タイトルで詩歌句・悲劇の誕生」に書き込んだ句


草神の笛落ちる日を緑馬ゆく



六月や馬のみどりを眸にみる



決闘は河原に噎ぶ草四条



梅雨空の蹄のあとや天馬肥ゆ




●同じく「タイトルで詩歌句・色彩論」に書き込んだ句


袖流す思ひ出もあり紺無尽



靴に沁む夏やふれたき白泉に



金泥の胸の重たさ金柑病



ヌード購ひ門戸、白羅に襲はるる



色彩は音とよモネの銀曜日



ユーラシア灰染めのひと歩を破る
 

2008年06月21日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

昨日から今朝書き込んだ歌句

 
●近藤弘文さんの「なにぬねの?」コミュ、
「タイトルで詩歌句・色彩論」に書き込んだ句


真翠を切開中に天子あり



藍染の手の哀しさを川に挿す




●同じく近藤弘文さんの「なにぬねの?」コミュ、
「タイトルで詩歌句・悲劇の誕生」に書き込んだ句


落胆の馬は脚より草となる



牧神がレダと遭へどもおなじ夏




●ミクシィ盛田志保子の日記に書き込んだ歌


夏の駅といふは来世に接がれゐて江差駅に降る北なる陽射





書き込み作品が五篇を超えたとき
整理のためどこかのSNSにアップすることにしました。
サイト上の句集・歌集にペーストもするので
意外とこんがらがってしまいます。
句帖・歌帖の重要性を痛感
 

2008年06月20日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

べうぼう以下10句

 
べらぼうの棒無頼にて女撲つ



ゴーヤ殺して南島走る犬と馬



頬杖を鬱循りつつ萌黄なる



丘の家煎餅に似て偏西風



口あるを嗤ふこの身も口有(も)つを



雨戻り飴吐きし身を蝸牛這ふ



橋と犬かたみ映りて木綿(ゆふ)の肌理



吸血の愉楽にまさる蛽(ばい)啜る



胎籠り黄泉の牛蒡の根深さよ



背を向けて菊を煮る女(め)に吹雪視ゆ
 

2008年06月19日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

今朝マイミク日記に書き込んだ詩歌

 
●廿楽順治さんの「ひろしまや」に書き込んだ詩


【ひろしま】


ひろしまは
露出オーバーだったが
ある日の町全体
その影を撮影された
影は石に印された
エノラゲイとは
何の鯨だったか
不意のつりあいによって
町と魚とが
以後永遠の
天秤をかたちづくる
ことがある
ひろがりつつ
ひろがらない
その形成を笑おうと
口に生卵を流す
やくざ者が
ジープをひっくり返し
路地から大通りへ
通路をひろげて
太田川のジプシーの
集落のまえでは
胸元の水も流して
苦い煙草を喫んだ
まだ暑かった
天秤なぞなんじゃい
うごめくだけよ
血が湧き
悪の沸くままになあ
以後ひろしまは
町というよりも
通路になっている
はずだ
柳はそこをゆれている
人らの泣き声で



●田中宏輔さんの「Hは発音しないから」に書き込んだ歌


無音のアッシュ、アンジュの声にありしかば詩は空をゆく葉月のわたげ




●依田冬派くんの「霧絵」に書き込んだ歌


フイルムに鋏を入れてそれぞれの乙女の時を島嶼になせり



島嶼なら南へつづくを由とする星の消えみち椰子の消えみち



はかなくて霧がみちれば朝のなか乙女のごとく夜がのこるを



切り離すもの紙のほかなくてなほクラゲのゆびが国生みを模す
 

2008年06月19日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

われたば10首

 
われたばをかぜにほどかせいととなるろくがつぼうじつしんやのまてん



ものみなにげんけいなくてふざけるなだからわれたばただかぜにゆる



あしたばのことばのひびきおぞましくわれたばわれたわたしながれた



やけめいたことばかきたくわれたばのえっくすせくすよるのくすくす



たばにしてわたしあげたくくろしゃつのこひのしづくのぬれになりたく



わらであるわらべのころをおもひだすわれたばすこしもみにむすんで



かぎたばのやうなひらけがないならばわれたばしゃらとかちにおとして



よるをさくあぢさゐまるくはしきかなわれたばむすぶそとのゑにしも



あーもんどのくわりんうるはしみつばちのきえたあしたをぬるるわれたば



われたばがきみたばをだくせっくすはかみをまるめてばさばさとなる
 

2008年06月18日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

蟹以下十句

 
蟹を解く解けばあまたの赤ボルト



風に哭くホトはたとへば枇杷の罅



海藻(みる)の海すめらぎを秘む潮赤し



窓からは私飛びだす蚊の渦中



天幻に鷹飼ひ星霜みちびくも



幹に百済の穴あつてをとめ響(な)る



笛吹いて郷隣を去り水おぼろ



なづき割れ割れた二三を犀とする



古りしものみな 壷のかたちす女(をみな)また



棒なれば口吸つて前立腺痺る





最初の三句が「なにぬねの?」、
柴田千晶さんの「葉山吟行」日記に
書き込んだもの。

また俳味がもどってきたか
 

2008年06月15日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

流れた婚姻色

 
【流れた婚姻色】


仮定は香る
婚姻色をもつ
それは毒で
未来を細身にする

笑うべきなのだろう
現在の怨恨城は
携帯と車のなか
崇高も消え
自殺が取り違えられる
歩行者の楽園を突っ切り
ナイフ出して叫んで

仮定のすまし顔を
覚悟して裂くべきだったな
此世が合わない階段なら
杖すら置く不敵さで
囚人として昇るべきだった
(みな、そうしているのに

自殺の代わりの他殺は
彼岸の道義を
海原から喚びだす
他殺する輪郭で
自分を組みかえて
クラゲ流れすれば
地球はお前を基点に
回顧の相に入っただろう

「あ」に濁点をつけて
呻いてみればよかった
それは泣くこととちがった
なのにお前は
仮定を仮面にした

徹底的に誤った者は
誰知らず悔悟の星を抱き
しゃがんで
自らの遅れを
炎やすしかない
 

2008年06月13日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

誰かとは君のこと

 
【誰かとは君のこと】


土に降りる
星の乳いろ
牧場しろく光り
仔馬を授く
誰かとは君のこと
君が生まれ変わる
銀かぎりない静けさが
言葉をもちだすと

まるで別の
命のみどり
春は梢(うれ)を伝い
夕かげ返す
誰かとは君のこと
君が生まれ変わる
黒かぎりない宵闇が
夜風を吹きだせば

あすはきっと
恋がさまよう
雨が坂を濡らし
麒麟児よぎる
誰かとは君のこと
君が生まれ変わる
虹かぎりない眼差しが
黄泉路を見とおして





立教・音楽実践演習が煮詰まった。
後メロ用の歌詞作成で
受講生がモチベーションをつくれない。
それで原点回帰として
シンプルな替え歌をつくってもらうことにした。
素材はフォークルの「悲しくてやりきれない」。

僕はこの歌、
日本フォークのベストのひとつだとおもっている
(花咲政之輔もそういっていた)。
元歌はサトウハチロー作詞、加藤和彦作曲。
どちらも完璧な仕事だったとおもうが、
サトウハチローの詩は古いもので
フォークルが発掘したんじゃなかったかな。

で、僕自身の替え歌は上。
僕はそこに鈴木香奈子の追悼を容れた
(鈴木香奈子も替え歌が天才的だった
――いずれサイトに載せようか)。

三村さん、別メロをつけてくれないかなあ。
そうすると彼女がここのところ病んでいる
複雑病も回避できることになるんだけど。

あるいはライヴだけで
この替え歌を唄ってもらうのもいいかもしれない。



必要あってこのところ、吉本隆明を読みつづけている。
『言語美』『戦後詩史論』『詩とはなにか』を読んだ。
今日はこれから『母型論』を。
そのあと、『ハイ・イメージ論』でフィニッシュのつもりだったが
別の文献もさらに漁りそうだなあ。

僕は吉本嫌い/吉本音痴で通っていたが(花田派だった)、
吉本の息の長い、しかも独創性のある思考には
実は驚嘆している。
やはり戦後最大の思想家と呼ぶべきなんだろう。
何よりも詩が書きたくなるのだ
(実は昨日アップした俳句はそれでできた)。

そういえば3年ほど前、稲川方人氏が
「吉本、読んだほうがいい」と
しきりにいっていた。
 

2008年06月13日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

分け前以下十句

 
分け前のをみな光れば犬流る



殺戒に触れる手 吟に花流す



上吟や滅紫を遂げて白葛あり



みなごろす仏神として反歳時



魚となる眼の幾つかを率(ゐ)て枕(ま)かん



夕月の繞(めぐ)りの情を傘で笑ふ



すすき世を背伸びてゆくも頭(づ)は没す



畝火なす詩の型をふと掌(て)に享くも



人間(じんかん)は魔間(まかん) トム・ヨーク派は曠(あ)れよ



悼心は羽虫と消えしのちも継ぐ
 

2008年06月12日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

草--鈴木香奈子追悼

 
終生や百蛇とりかへ差しいだす



号泣す蜥蜴おもかげ飯(いひ)の影



絶壁に魔女とゐた日の薄扇



抹香に鯨の顕(あ)るる奥の院



ほどきえぬ紐もて笑ふ香奈子かな



禅臭は病葉の敵、墜ち歇まず



引き絞る乙女の胴を滝登り



平均のため死を希ふ草加王



死の朝は雲あかるくて床ひと日



洒落を云ふ金の舌佳し草ひさぐ



やはらかき複数もてり女繭



刻々のコク切れ苦み、時を呑みて



童顔に十年後なし額の花



千秋の万花再会約束す



女(め)帽子も家に遺るや葬ののち



鉄柵の中なる中を眼が囲む



無差別に似る死の掟馬吹かる



祭文の語る草ぐさ草葉行



草央に苦なる草あり草微光



茲以て湿潤を断つ梅雨なかも
 

2008年06月11日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

かな子送り

【かな子送り】



鹿のゆくえを追う旅は
涎のような蛞蝓が
這った痕に
いつも沿う
事前に銀が
描きこまれていた
北へ、だろうか
俯く眼が消え
足も風塵になった


シャツのなかでは
はらわたの影が細り
それをひらくと
現れる墓石の裏が
紫で温かいだろう
やはり鈴木なのだろうか


輪切りにされゆく
トマトを眺めながら
集めて浮かぶ
更なる私
抗鬱剤を知っても
「抗」の字に
恥しさをともしていた
いつもちいさな
多数の拠点だった
拠点はしかしみえた


添うもののかぎりなさ
引き連れて
日のむすぼれを
しずしずあるくだけだ
なぜ明るさの
季節なのかは
わからないが
もういないのだ
そこにかな子が

2008年06月10日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

なにぬねの?に書き込んだ10句

猿面の赤さあかるさ太郎死す



狐憑くゆびもてクツクと背中掻く



コルシカで田虫と交む伊達蛙



かはづいふカトとかげろふわが無音



夏の絵や浮草を描きとよもして



殺生の鰹まないた黄の滲み



蟻走あり季節無尽に余りたる



拐かし寄り添ふものに蛇の気配



ゐざりに飽いて透魚を川にいさりする



万霊のソラリゼーション雲の峰





最初の4句が近藤弘文さんのコミュ「タイトルで詩歌句」
に書き込んだもの。
次の6句が柴田千晶さんの日記、
その掲載俳句をズラしてデッチあげたもの。

2008年06月10日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

宏輔ミクシィ日記に今朝書き込んだ七首

 
イメージは孤絶のなかに端坐して個の眺望を締めてうるほす



本物の詩人おそらく詩のかたちなせる背曲がり杖のたぐひか



腸(はらわた)を秘め紫陽花の辺をよぎる千々なるものの放射すがしく



血流はしづかな砂を底に溜むわが眼底のちかくおもへて



ときをりはわが身を剖く去年(こぞ)呑みしこがね酒の帰趨たどらむとして



陽光と風の境に身をおいて歌意なき今や無尽の溶媒



しらほねを初夏の陽が射す透視体として下天を渉りてゆかむ
 

2008年06月08日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

マンガは動く

 
昨日・一昨日と
『マンガは動く』と題された評論集の校了作業だった。
編集は僕の立教での教え子、明道聡子。

校了といえば最終確認だけの静謐な作業をおもうだろうが、
今回は明道さんの書籍編集の経験不足もあって
勝手がずいぶんちがった。

そのまえの再校で大量の脚註書きをおこない
それだけでゲラ返却をしてしまったので
この校了段階で改めて本文、
それからつくった脚註の連関を見ながら
全体を素読みしたあと
(この段階で「はじめに」を書き、
しかも明道さんからリクエストのあった巻頭詩も仕上げた)、
さらに気持を落ち着けて本文・脚註を
それぞれ別々に素読みした。

註の分布の少ないところには
新たに註を書き込み、
そのデータを「はじめに」「巻頭詩」などとともに
メールしていったから
とても校了特有の落ち着いた静けさなど訪れない。

犬のように眠くなれば細切れに寝ていったが
気分は不眠不休というにちかい。
著者が僕のように編集経験者でなかったら
とてもこんな八方注意の迅速作業など
できなかっただろうとおもう。
つまり昨日一昨日の僕は
著者ではなく編集者のほうに似ていた。

これでいいだろう、と
赤字入れを終えた校了紙を改めて見ると
「真っ赤」だ。。。ゾゾゾ、としてくる。



しかしどうも昨今のPCデータによる出力ゲラがダメだ。
ルビの不備、勝手な字間ヅメ、
約物が活字時代には考えられなかったような
四分の一角程度の小ささへと場合によっては圧縮され、
正しくデータ入力しないと
約物ではじまる改行のかたちがエラくファジーにもなる。
これらを活字っぽい美感に再構成するのは
実は時代の潮流に挑む神経戦のテイ。
赤字の多さの主因がこれで
活字時代の美意識をそろそろ改めるべきかなあともおもう。



本文、註を別々に素読みしだして
気分にようやく落ち着きが灯りはじめた。
僕は記憶力が悪いので
少し経つだけで自分の文章を忘れてしまい、
いつでもそれを新鮮な気持で再読できる。

評論集のタイトルは
1.「現状のJコミックシーンが
その商業主義の埒外で刻々と素晴らしく動いている」
という含意と、
2.「マンガの愛着が想像力と視線と頁繰りによって
コマの細部を「動かす」体感から生ずる」--
この確信を併せて成立しているのだが、
いま再読している自分の文章が
マンガのそうした属性に沿うように
思考を刻々と「動かして」いるのもわかる。

比喩でいうと、
ズレたり融合したり衝突したり消滅したり溶けたりして
注意喚起と断定列挙を基本とした文の意味以上に
そうした「ゆらめく運動」がみえてきたりもして
そういうのが他人事のように面白かったりするのだった。

いまちょうど吉本さんの『言語美』を
必要に迫られて読んでいる最中なのだが、
そっちよりも「動いている」(自分の感覚では)。

僕の文章は悪文・美文とさまざまに毀誉褒貶されるが、
文体はそこにたぶんほとんどないのだとおもう。
バサバサ動いている運動があるだけで
それがじつは自分の感覚にとって清清しかったりする。



ともあれ、そうして校了を終えて
駅前のサテンで校了紙を
注意をうながしながら明道さんに手渡す。
そうして長い金曜・土曜が終わった。

本は今月末に見本が出るらしく
大学の前期授業の終わりには
受講生に紹介もできるだろう。

ちなみに扱ったのは以下のマンガ作家(作品)。

・高野文子
・いがらしみきお『Sink』
・西岡兄妹
・安永知澄『やさしいからだ』
・魚喃キリコ(『短編集』が中心)
・浅野いにお『ひかりのまち』
・同『虹ヶ原ホログラフ』
・古谷実『シガテラ』

おたのしみに--
 

2008年06月08日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

憂鬱のうた2

 
鱗粉を紙に転位すこの生はうすく死んでもなほ生きのこる



夜を暈かすとほさをもてる蛾の模様いづくの胴に馴染まむとする



粉を渡し粉を受けとる愛にして交易の外(と)や麦蒼くなる



たましひの減量損じず睫毛より入りくる初夏も波状のひかり



透くものをいだし展けばカーテンもにれがむごとく愛ひるがへる



親不知ならびたつみち平成ゆ父母(ふも)のおもかげ反射の相に



咲きそめのあぢさゐ野菜に肖たるかも六月の嘴(はし)天に隠るる



恋蝶の狼藉を見き暖気とは淡きが交むひかりの梯子



茫野を書見の台に置きし日は兜子たなびく浩司したたる



幸彦に才(さえ)の尠なさしるくとも乱数表よ獄のにほひす
 

2008年06月05日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

作文以下二十句

 
作文(さくもん)に門を設けて風の白



空蝉は虚脱のかたち夜着とする



曖昧やイの字が二つ胃もふたつ



蒼思たれ蝋の減りざま泪にて



天明は木綿(ゆふ)の香がして裏千鳥



異浄土に棒佇つ打倒断念後



穴子焼くこの身も夏に煙りして



期限ある愛に似たるや絵蝋燭



傀儡や伽藍と割れるわが欺愁



捺印に夏の字なくて紙荒るる



白餓鬼も女も溢る豹の檻



かはほりが空に縊れて黒点に



銃もちて貴公子然と腕定(き)まる



轢かれゆき青滴らす菜の渦



踏まれゆき星雲となる蝸牛かな



芥子生ゆる野に義絶あり日傘ゆく



古りし日はゆびもて水に皺なせり



八方を視て割るるわがアクタイオン



赤貧を洗ひ白貧酢はやさし



青雨にて田の重畳も伽ばなし
 

2008年06月04日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)

けさミクシィに書き込んだ十首

 
瞼には小人のをどり惜しむべく瞑りもせず事を見てをり



陽だまりに小人群れゐる消滅を演じむとただそこに群れゐる



きりぎしより投身つづく身を皿に虚空へ擲げりよみがへるため



静寂をおのれの睡りに閉ぢこんで犬、円形の初夏の沼なる



啼くといはぬ犬ごゑ鳥と遠くして唸りに銀のふるへもちたり



すれちがふ瞬を火色に染められて昨日の犬は今日の似すがた



犬をもつ手には柔和が生(あ)れそめて刹那ふしぎに栄螺の感触



腹這ひの犬の周囲も恐れたり「鬱の起源」は金(きん)に十重せり



妖怪をゆたかな無駄と切り捨てて口に穴あるそれも渾沌



死後の日は円了として池をゆく浮草うごき夏をゑがくも





今朝、ひとのミクシィ日記に書き込んだ十首。

八首めまでが田中宏輔、
九・十首めがみよちん。

みよちんの日記、すごくよかった
 

2008年06月04日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)