ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

ろてき

 
 
【ろてき】
 
 
とうにしんでしまったせんだつの
ゆめをみるととてもやるせなく
いえでまっているといわれながら
そのいえにさえたどりつけずに
さみしいかわべりをゆきまよった
おわりをみすえてじさつするときが
ひとへのほんとうの時刻だろう
それでもよのなかはすがたをして
昨日の尾へ今日のくちが噛むような
ながれゆくそらをながめていると
ときにとりかえのきかぬ断絶もなく
のびるつんだおさないはるが
いちょうをみあげるけさの秋へ
くうどうのからだをつがいに
つながっているとなみだぐんだ
ひとつがべつのひとつと照りあうと
ときがいきているからだまでもち
井戸汲みをするものがいまもいると
まぼろしにみだれることがある
みずのおもたさであえぐかいなの
そこにじさつがしたたっていた
それよりもしごとしごとのあいまに
しずかな背景のあるなつかしさを
ひとの世のあしぶえさながらに
なにかのしらべとみつめたりした
だんだんに人死がすきとおって
たいりょうの死の実相がみえだす
そうもくそれぞれにゆがみもあって
せかいはかたちからささえられた
蘆笛とはくちをひらくひとらが
ことばのなさをうたううつむきだ
列あるかぎりそこにゆびさせる
しんがりがおわりをはじらっている
ひとはそうしてみえざるをえず
やがてはせんだつになってゆくのだ
なんじのしぬのがわれのゆくこと
わたしはわたしのとうといありかを
ひとによりさまざまにじさつされ
ひとつ身のよすぎで減少にあまんじ
うれえることばでただくくられ
かなしくてとてもみちたりている
ろうそくをわたされて身をふきけす
いやましにくらくするしごとにも
ありうべきひかりのさだめなのだと
かなしくてとてもみちたりている
 
 

スポンサーサイト

2017年10月16日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

旅の呼吸

 
 
【旅の呼吸】
 
 
いつもおくれて車内にあらわれた
とびらがとうにしまってからだった
にくたいがそんなだとしるものが
あらわれにかげをかかげたぶんだけ
とびらにもうまく寄りそうことができ
おたるへむかう海が頬でもあふれた
ひかるかげんでかたほうとなって
ゆくさきのほかなにもかんがえないと
かんがえない身がいわば中途化して
通過してゆくものへとけていった
だれかれの中途までひかりみちるのが
はめごろしにまもられた車輛だから
せかいは筒が筒をぬけるようすをして
めいもくするだけで栓がはずれる
こまかなあわがあたまをつつむなら
ぞんがい王冠がひとの世におおい
のこされた身ひとつがくうかんでは
あなにみえてしまうおわりだから
とりにがしたひとをはなれたままに
あつくあわれみつくそうともおもった
こせつでさみしい聖画のことわりだ
ついにたどりつくほまれとかかわれず
ゆききだけでひと世をおえたのなら
なにも足し算などなかったゆくたてが
どれほどつつましくみえるだろうか
どころかゆききにさえわずかにおくれ
ゆききそのものをなかせてしまった
がっこうがえりのふたえのみちを
ひとさながらおもいだしているのだ
たいせつなものとはバスをのりついだ
窓外をさむいふるびらがながれたが
ちまちまくりかえしたのりつぎが
たびのきれいな関節だったこともある
いまではいきるための関節をなくし
はこばれてゆくほうがかなめとなって
かばねめき、こころのなかが水漬く
きえたひとのかわりにみずがあり
おたる運河はそのさだめにすぎない
往相ではじまったもののすべてに
あらかじめ還相のあるだろうことを
おくれるにくたいがさぐりあて
ふくらんだりちぢんだりしていた
 
 

2017年10月06日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

支度

 
 
【支度】
 
 
やがてみずからを架けるものを
せおいながらもあるかされる
そんなすくせになけてしまうが
おもいかえしてみれば樹は
みなそのことをかたちにして
なおあるかないだけなのだった
げっせまねはそうしてみえた
ぜいたくが眼にあるのでないが
まぶかくあお木をながめつつ
木椅子にしずむひとはきれいで
ひたいとあたまなら木製の
ほしでまるくつつまれている
かたわらへにぎりあう手を
はなしてひらけばもくめがあり
てばなしたものがてのひらに
うつくしく転写されている
かくのごとくおもむろに
いかだなどになってゆくが
どこをながれるでもない
ものの恍惚が部位をわけて
からだのひとかたまりが
えだわかれする不安のうち
花の部分をおしえへさしだし
わたしらのゆれうごきに
風のとおさをくらくひゆした
かたさがやわらかいというため
たましいのてがたい柔弱を
さききえる花ばなの反語だと
つたえたことさえあった
かなしい歌はこうきこえる
きんもくせいの北限はどこだ
ここらではかおったことがなく
あお木の葉のあるちいささを
せおってあるくすがたのみ
ひとにもさがすしだいとなる
しあわせに似るすぎゆきが
ながめるものをゆたかにして
こつこつとあたるようなハグを
くりかえしてはつかれてゆき
やがて抱擁が打ち綿で包まれる
みずからのみえなさの奥に
みえていたみずからを架ける
はずかしいからだがウディ
そうおもいひとの世をしぬのだ
 
 

2017年10月03日 日記 トラックバック(0) コメント(0)