メモ154
154
かんがえられていることをかんがえる
とは気づいたひとになるためなのだ
羽虫を占める翅のひろがりがこわいが
気づいたひとも頁におもく挟まれて
ただ翅のかがようまで、熨されている
お知らせ
永方佑樹さんが今号(11月号)の詩手帖で、当方の『詩の顔、詩のからだ』につき、実に嬉しい書評をお書きになっています。ありがとうございます。過褒にあずかって、恥ずかしいくらい
『日に数分だけ』出来!
去年書いていた、ぼくにしては長篇の部類に属する詩篇群を一本にまとめた。滔々とながれる時間が、読者をいつの間にか「べつの時」へと拉し去ることができれば本望、という感じかな。『日に数分だけ』(響文社)、帯文は高橋社長のお力で畏敬する宗近真一郎さんから、とてもすぐれたものをいただいた。ぼくとしては初めての北海道の版元からの詩集刊行となる。出来立てのほやほやで、さっき札幌の印刷屋さんがじかにぼくの家まで届けてくれた。
装丁は、名著『つげ義春『ねじ式』のヒミツ』(響文社)の著者・矢崎秀行さんではなく、そのお嬢さんの矢崎花さん。グラフィックを多用し、ぼくの詩篇の時間を、何かを潜り抜け、ひかりへといたる詩集全体の時間へと、創意的に増幅している。とても嬉しいことだった。組版中には二段組もあるが、その読み方が最後の二段組詩篇で確定するなど、挑発度も高い。本当にデザイナーと作者が協働した感慨がある。しかも手にもった感触が小ぶりで女性的で柔らかく、詩集自身が読者からの再読を望んでいるのが伝わってくる。表紙は贅沢にも帯が二重化されている。ノドのアキが狭いが、それも詩行のながれに空白をつくらぬ配慮ゆえ。
いまは詩集刊行ラッシュ月。日に四冊の新刊が届くなんてときもある。埋もれてしまうのが怖いけれども、きっとお送りする詩友なら、アンケート回答期日などまでに率先して読んでいただけるだろう。北海道からの送付なので、東京周辺には木曜以降に届くのではないか。
メモ153
153
きよめの水をかずかずのまどへそそぎ
それらを鍵盤になにごとか奏でたい
そう家並から家並へとうながされるが
いろわけたゆびでなやむゆうかげは
透けるうすさを梳きしずめるしかない
メモ152
152
まけかたのおくゆかしさは
あまた詩にあり文にもあって
たえずしておくれるものを
自余りに編めずいる、とおい
仕損じのみを想いおくこと
メモ151
151
つなを両岸から熊手にはりわたし
かわもへすべらせるようおおきさを
はこんでゆく数十という気がした
遷らすのがゆらめきやすいゾウ状で
うつろなゆきさきが河口だとして
かならずや水をなかだちさせるのは
もの逝かす覚悟にもかなっていた
メモ150
150
もだすか、あるいは嘶くしかない
そうおもえたからそのながいくびの
どこに柱状の声帯があるのかを
はたでさみしくはかりかねていると
節理がずれてささやきがもれだし
それも馬みずからの断念だった
メモ149
149
木の瘤のほうがゆっくりとおざかり
わたしがとおざかったのではなかった
ずさんな移動をあらぬ世にみたのだ
つくりだなへくるみをおくそのときに
メモ148
148
秋霖でもないのにみちの鴉があおくあり
おもいがけなさもななめにふっていた
やなぎやふじ、春のしだれの直にたいし
平坂の秋は萩にそってななめがすべり
ひとづてに禽のみあげまでよわめてゆく
メモ147
147
海抜のぬきんでているおちかたに
けぶたいにしきがたたえられて
あれら屏風はうみへあらがい佇つ
なみいるものに海抜をあてがい
等高線もて傷わたすいとなみでは
くらいづけのあやまりもしるく
ふたりへとひびかう、底まで秋と