なきもののゆれ
【なきもののゆれ】
よみだす詩集を
手もとに立てたりせず
それでもそれを柱とするため
身がまえをかんがえることから
息のありかたをはじめる
それはうつわかもしれない
きんいろのほそいふち
そこへくちびるをよせるように
こころなどちぢめてゆくと
紙のなかにいる者が
なぜこれほどしたしいのか
なぜ点在がこれほど世界なのかと
きれいな鼓動が紙をうち
ときのうちがわがひらいてゆく
いろいろなすきまに
すでに終わったあさが
やわらかくただようから
ひとの足し算さえ了えたのだろう
わらっておさめようとする
この肩のうえで
なきもののゆれがかさなる
メモ160
160
ひみつめく手のひらが
うちがわを作りあげ
ゆびはとがってうごき
おのれのまぼろしを裂く
妓の手踊りがおこなう
過去あることのなやましさ
きそわれた姸がおとろえ
やがてそこへ雪がふる
メモ159
159
本土のくちなわをあがなったが
いろくずだけをながめるものにした
水に放てば素早く移るだろうが
なまなましいスローモーションを
ふる雪にもとおくおぼえるため
輪のくずれたそのかたちが要った
メモ158
158
ながれおもる川にゆきどまって
みえたものがじぶんだとおもった
たたずめばそこがみぎわだから
よってむかうことをふかめる梁で
からだの屋根をしろくまかせる