ゆげ
【ゆげ】
くりかえすよのなかで
うつくしいもののひとつが
ゆげかもしれない
かたちのなさがその形で
だとすればひろがりきえることも
もとの液体からはなれ
色をうしなってうまれるのも
ゆれていることさえ
すべて後悔とみえるから
よのなかのとおい花のめぐりにまで
ゆげをかんじてしまうとおもう
死にたがっているそのひとが水にふれれば
たちまちけむりにつつまれるようだが
もちろんなにももえていないのだ
まなこをみればわかる
ひとのやわらかさとはちがうゆげが
ただあなたとなって一刻
あなたの場所から立ちのぼる
山麓通り
【山麓通り】
塔をみつめればことばも
たかく立とうとするのかもしれないが
うちがわへ折れたがって
まがっているをあるいた
ああ、よこたわるひとをみると
動悸するのはなぜか
死んでいると錯覚するよりさきに
いとしい横臥がみずたまりとおもえる
つきあいの発端もあったはずで
ひとのからだに空の映ったおもいでが
むかしからの寝床でぬれている
材のかさなりが水平線とみえる
ひとつの角度は
青に病んで、といえばいいのか
むかうことが喘鳴している