反り
【反り】
ずっとつまらない靴をはいている
ふゆぞこものを一季ごとに
はきつぶすのだからしかたない
いつしか網でできた
かぜよりもかるい沓で
しめったのはらを無尽する
もくどうらしきをふみゆきたい
そうしてかなしみほこるのだ
からだとかんがえとのあいだを
おびている快活のあまり
もはやひとですらない
そういうかかともろとも
さきゆきをかなであいたい
おんなのはきもののかわいさが
雨竜這うもんようにてなされ
みちへわずかとどかないあさもある
すきまゆえにひかるすきまを
病臥のあんぐるで下草がみとおす
みえたおおもとにわたしはいる
世はどこまでも、とおあさだ
ふゆぐつとりどりのはかばなのに
はるに沓をすてるとつたわる
沓みなをすあしにはいて
のぼるやさしさがうごきにある
ひばりとつげてもよいし
反りとつづってもいいだろう
青
【青】
まなこへ女体はなかだちをする
たとえば華奢はすくなさが
そのままあおをはなつと啓示し
ことばそのもののさがをもたらす
からだこそかたっているのか
身を薪にしたとおめのふとどき
道理のつめたさをかきわけてゆく
きれいなつまさきのうごきを
腰とともにおぼえておこうとする
とりいれでは女体がおおきくみえる
北のまなかの縮尺のふしぎは
われら島嶼化とどうかかわるのか
世のかたちなどヘムにすぎないのに
かぜがおこるまさにそのとき
くうきの層にきづくことはない
もう女体らしきもゆれている
スカートのあわくきえた雪山河の
ほとをおもわす青のふかみまで
壮観
【壮観】
とどこうとすることばが
つぎつぎとおくちからつき
はるかにおちてゆくそうかんを
それすらも歌とみやっていた
ふろにはほそく瀧などがあって
なみだが非人称であふれだす
おとからうまれた混浴だったのか
耳より耳のうちを聴くため
耳介へ耳殻をよせてみた
ふたごめいたならいなのだが
主語のおもいが人称化できない
ゆげのなかをうつろうのも
やすませたきみの飴状だろう
ゆあみでしぐさがながさにかわる
ことばがきみの髪洗いへとどかない
うちらだけのおのれがつづき
湯にくらく穴ができていた
屈託
【屈託】
むかしの中央線の
あれはなんとよぶべき色だろう
おれんぢへくすんだピンクがまざり
さしのべたうでのなかそのいろで
たおやかなはだかがもえきった
なにかをみはるかすとき
遮断機をおぼえてしまうのは
かんがえのじさつにもにていて
とおくはそのようにあった
からすはけれどもとべ
とぶまでをみればじさつがきえる
ばくしんしてくる列車を
だきとめる詩ばかりが
こうこつともてはやされた
まなびやへむかうあゆみのおりは
とうとつにまちがってしねた
あれもみやこへひかれた横一線
わたれば屈託がおとなく斬られて