御心
【御心】
夏服のポケットはうすよわいから
かがよう箔すこしをあさくいれ
わたしのいない転瞬をゆめみると
みこころのおいでました当夜も
つきひ貝のかのみぎひだりのよう
日傘
【日傘】
いっせいに谿そこへ日傘をなげすてる
ゆっくりとした抛物線と回転の花が
わたしらのたかみをただ中途から
しろくうすく、ささえおよぶように
瀞
【瀞】
いまはむかし蒼い髪のふたりが
よどむふかしぎをつげにきた
おのれをゆめみて映りとなった
瀞もまたながれのなかの君子だと
夕狩
【夕狩】
わかきのようにあかくあがめきたのに
てのひらが夏ながら霜を置きだすと
やがてはすくなさをひこうとした
死もあかうせん、そのなみざかりなぜ
悼みするおりおのれまでいたむのは
員外
【員外】
ひと日ごとのととのった枡目に
むきのちがう自分を置いてゆくと
わたしはうきしずむ水禽のよう
けれど枡目がみなもにのみ浮くと
きづいてはみぶるいしてしまう
あおぶくれた員外も映りあう日は
あからむ
【あからむ】
手ではなくたおやかな骨を
さしいれてはさしぐむように
ひとのふかみをつかみおもうと
おなじ晶相にわたしもきえて
もののふくむふたつがあからむ
例外
【例外】
あるくたびしきいをふみわたって
これが例外だとあやめをとおる
まどおゆえに一列も列でなく
はなれてゆく、が潰れていった
瞑り目のやりかたを千かぞえれば
うしろ髪ひかれこころひとつが
みたことの例外をわずかさだめる
符について
【符について】
おんがくが減っていってきえた
この世さいごの余韻にくらべたら
へだてて散るひとらはまだしも
からだの音符をとおく立てあって
最弱のとどきゆくはるか理のさなか
夜雨
【夜雨】
たびたびの夜にきよめられ
寝台が銀の粉できらめく
ねむりではふたつのまどべへ
それぞれ寝台がはなれて
からだをゆめにけずられる
波頭
【波頭】
ひとに会わない繭へつつまれて
からだはゆびさすのをやめた
けれどまどべを逆換がおしよせ
ゆびがしらむのだ、どちらが
きよめのための波頭かをきそい