下天
【下天】
最高に蜜をふくんだぶどうがとどき
房こそがかたちのひかりとそえられた
わたしらのくちるまでみとおすのだ
ゆきむしが天へいたらぬかなしみごと
夜明け、マグダレナ
【夜明け、マグダレナ】
ひろがるさかいめのなさをおもえば
そらが夜よりもながいのは自明か
そらのみだらな赤裸をかんがえぬため
香油のしたたりのようにまとわれる
在ってない一糸だけをとおみした
飾り画
【飾り画】
ひそかに飾り画がゆめみられた
主客など一如とはうそぶけず
身につけたおまえをぬぐひかり
空き壜の底へ翅を置くいとなみも
はくおし
【はくおし】
かどをまがるたび秋がふえて
ただ肌となり透く影をながした
まみへの箔押しの、とつおいつに
背界
【背界】
背界、とこれからは書くことにした
かぎりなくゆくうつくしいせなか
くびのなくとおい馬群のゆうぐれだ
異風
【異風】
むらさきがかったかちいろになると
葦束にしてかかえ商秋をわたるが
みずべ衆とよばれる異風でしかなく
ゆあみ
【ゆあみ】
あさの湯につかり脚をくんでいると
ゆらぎつつそこ、下弦をなして
げんかいが骨折しているとみえた
まつろわぬため、まことみずからが