僭王
【僭王】
いかづちではなくスワンが
むしろ霖雨のように城へ墜ちる
翼廊ふたつがもちあがり
とおめにとぶかたちをとれば
おもいすべてで飴がとける
どれほど移らされようと
いつも城だけをすみかとして
ゆにっと家具めく配下を伴った
数理てきな、かりのよだった
天蓋としてスワンがおともなく
ねどこをゆらして地震だととびおき
さけびからは詩もこぼれていた
眼涼
【眼涼】
地のくぼみに身をよこたえ
しずかにくぼみをまねる
聖者エシロはかくしるしたが
おんなどものはだか身には
なやましいそれがたくさんあると
コイケは巷塵の湯舟でみてとり
にんしきの恍惚にもひたった
めのまえはみず容れられるべき
地人のくぼみをさわにひろげ
すいぎんのならびにたぐいする
ろざりおこんたすをつないでゆく
うれいこそを眼涼のささえにと
木橋
【木橋】
木橋にすこし似たむすめが
さらにも似ようと
いまし木橋をわたりだす
となりあう関係はてつがくだが
こちらとあちら、その奥行と蝕は
いつもたりなさとなりうる
あさねどきのけいらくだろう
かわぎりがたち、ひかりがこめ
川の度量もつかのまふえて
同化をはたせない二本脚からは
ものうげな分岐と中心が隠顕され
うつくしいゆえうつくしさがうごく
会話
【会話】
立ち話のぜいたくができなくなり
そぞろあるきのおちこちに
うかんでいた水晶球もきえた
遷移してすがたと化したひとらは
きせつのすぎた木陰へつどい
球とはちがう蟠桃のひらたさを
かつてのぞんでかたりあった
みな水晶に透かされたできごと
アーモンドのかおりもすこしした
うまいまずいをただよろこんだ
はなしあつめでもかわらない
にんげんがうごきそれでよかった