斜性
【斜性】
坂のなかとはどこをさすのか
斜面すべてではないだろう
おだやかなひとつのななめが
次のさりげないななめへつながる
そのときに、なかがあって
ひとはそこにこそ足をとられ
のっぺらぼうの斜性となり
それまでの坂をうろぬきつつ
おのが直前へときえてゆくのだ
みずからもりあがるかたわら
そとをくりぬいているので
なかもうえからくずれてくる
潮音
【潮音】
すみわたったきれいなひとみが
こちらのひとみもすませる
まなざしはそのようにつたう
ゆきの日の巨木の枝えだは
ひとのみかわしをかすめつくし
まなざしをつたえおわった痕跡で
かたちがまとめあげられている
しずかさがほほえむ瞑目になれば
とおめにはかおしかないのだ
まがる枝ひとつだけがなみだを
この世いがいへとほとばしらせる
ちょうおんもなごりおしくひびいて
灰色
【灰色】
はいいろのちいさくかわいい花が
せいぜんとみちばたにならんで
あるけばものくろふぃるむの
さなかへはいってゆくようなのだ
ものくろふぃるむのながめには
きんいろとみえる急所もあり
まなこではそれが粉としてのこる
あしくびにりぼんをまいた
あのあるきかたの、きんの善さ
あしくびと茎とはつねおぼえあい
倒立のままにしんでゆきたいと
はながなびくのもはいいろだった
用字
【用字】
詩は書かれているてもとで
かくひとのまねをする
枝をゆくリスと枝の関係のように
おなじものにたえるというのは
いんさんなえだになることなのだ
鞭さながらにするどく撓って
詩のくろい流血をまっとうする
からだをとおし諱はつたえた
こすれつつかけばいつしか
ひともリスもそでぐちにあふれ
エダ、にしては腕がまがりすぎて
いとおしい用字をかこっている