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ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

耳朶

 
 
【耳朶】
 
 
そんざいがひとつの耳にみえたのは
おとにとってなきたいことでした
 
うすいジダ、とその名をよんで
小骨や蝸牛などふくざつな
共鳴のなかみをつねゆめみていて
 
けれどもそんざいがゆくえなき
あなのみちびきからはじまるのを
どうして楽章ともおもえたのだろう
かぞえうる小節のなかだったのか
 
髪にふれるジダ、とその名をよんで
くずれる接辞をかずかず聴いた
どちらかが霧深くかたっていました
 
 

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2022年05月21日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

横臥

 
 
【横臥】
 
 
からだにあった縦が一切きえ
よこになってしまったのだから
わたしじしんもきえていった
 
しずかなかたちのこもりぬひとつ
平椀のように水がうすくもられ
 
あんいつへ風がふきこんでくると
しんけいしつにみぎわがゆれる
さざなみがわらいじわなのは
そのかみがけいれんしているのだ
 
横臥のみではすがたがならない
それでひとがしんだりもする
よこになってしまったのだから
 
 

2022年05月20日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

手題

 
 
【手題】
 
 
おもわず主題を手題と書きそんじ
わたしらはあやまりをしってしまう
 
海へとくだってゆく坂のように
わたしらは手においてこそ
しづくりがかたむいているのだ
 
よこからみればどろぼうさながら
おずおずと手題をさしいれ
つづきとおもうふかさをはかる
愛楽のさみしさにそまりつつ
 
てのひらにてなす そらの多し
もんじいがいをつづりながら
けむりもおとにあらわれてくる
 
 

2022年05月12日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

階段

 
 
【階段】
 
 
階段はとつぜんあらわれるもの
ひかりのなかに立つかたちで
しかも手すりの翅をあまくとじ
みやびにあおくほそまって
 
やこぶとか梯子とかではない
町をまようと揮発域として生じ
けあげの横列だけがみあげられる
 
したしくしたひとらのような
ひとまとめの鉛直のかなしさだ
 
たのしかったよ、ありがとう
のぼればおもいでにひびが入るので
橋どうようにかいだんも我慢する
 
 

2022年05月07日 日記 トラックバック(0) コメント(0)