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ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

無双

 
 
【無双】
 
 
よい理由とはすでにひゆなのだと
人死にのつたわる地でおもった
てんまどからひかりがおりていた
 
ずっとふたつというあらわれに
身を割ってなげいていたころ
 
そもふたりづれのあまたが
ものへのひゆよりもうつくしく
あれは母娘、あれは姉妹と
さいだんをかぞえあげていた
 
おなじ綺羅をまとうとなおよい
かるい換喩かあかるい暗喩か
おんなの無双へも達するようで
 
 

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2022年08月26日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

L字

 
 
【L字】
 
 
ひがわりでとうざい南北に
まくらをおきかえるべく
L字型のベッドも公案されたが
 
ねごとすれば声が鉤に包まれ
しゅゆのうちにはかなくなった
 
ねむりはすすきへとわけいり
おきぬけなぞぎんいろに
詩の舌がしばられてかたく
ものをいうとほねもにおった
 
寝台そのものを恋とした
おぼえがこのL字にはあり
おのれひとつの肉愛がのこる
 
 

2022年08月24日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

著莪

 
 
【著莪】
 
 
とうげをぬけようとして
こめつぶがぱらぱらとふり
ありがたく鉄鉢でうけた
 
凪ぐなのか薙ぐなのか
みあげた仏すらわからず
炊くやすらいへむかおうと
つぎの谷におりていった
 
抹香の尾をほそく引く
くだりのひとこまずつが
つながらぬ連鎖のよう
 
身は句集のようにつかれ
しゃがのたかさでしゃがむ
 
 

2022年08月08日 日記 トラックバック(0) コメント(0)

耳栓

 
 
【耳栓】
 
 
ないてきな音楽を脳の風へみたし
耳栓びとはひとみをかすませる
おもいでとはちがうものがみえる
 
だれもがみみにふかく栓をして
なかに未知をみつけたといいます
どろからわいて蓮がこぼれだす
しらくもが段になったあのなかに
 
ひろく水にうく蓮葉のみどりが
層となりたがるみなもをなだめて
 
おんなのすがたをしたものらは
ただおのれを消音して畔になります
それぞれの同異を線とつなぐべく
 
 

2022年08月04日 日記 トラックバック(0) コメント(0)