花眼
【花眼】
晩年ってよびかけがおもい
みえないものがみえてくると
花眼にのぞみをかけられて
からだそのもののまどをみました
ふるやのつたの壁を背にして
かべがからだのかたちにひらき
ひとのむこうがのぞけました
なんにもこわいことはない
ひとつあるのはふたつだから
やまでもそれ以外が褶曲している
へちまの余韻のみぶらさがる
にわのうすあかりもながめました
福音
【福音】
福音のみでなりたつ詩を
つむように屋上にゆめみる
失明へむかっているのか
ゆきふる屋上でとおくたつ
あのひとのむねのあたり
ときいろのりぼんがとうとう
ほどけてゆくのを裸視する
もはらわたくし、とうずまく
あれらみながけどおい福音
たよりには訃音もふくみ
そでからのとりがひびくかに
よさがひろさへ伸されだす
風紋
【風紋】
あなたがさったのち残された座面に
いくばくか砂の散っていたことは
ものものしい家財を震撼させた
わたしらはものがたらぬため
くうきへむかい気弱にかたるが
うたがいをよんだあの身ひとつは
顚末に似ておそろしくかんじた
そらとおく砂が天上記念日にあふれ
いなみにからだをおいたあなたは
スカートをめくり招いたはずだ
風のしわざだよ、もういないだけ
はなやかな見栄えすらも紋となった
貫通
【貫通】
つぶやきながらながめる癖があり
ゆきぞらをみあげていたおりも
そらのころもとくちごもっていた
内外どちらともいいがたい層に
ほろびの錫がうすぐらくみち
かずのおおさでこころがくちた
ひとをおそれるならただみあげれば
おともなく箔はみずからを舞わす
かたに借財をつまれてひとは
ことなる多にもつらぬかれている
なぜしかし相殺もともなわれるのか
こわれつくしてすがたがわらう