五項
【五項】
置く掬う返すといった
てのひらのうごきの系列で
あえなく片恋をてらす
ひらいてあらわすおりには
からだのうすやみだが
つづくうち初夏すらねがう
そとがわとなってしまう
はなれてさすっているのも
もののひめる傍流部分だった
萼の色うつりをこのんだ
おだまき、名に回転があり
ゆびとみたてる五項がめぐる
橋門
【橋門】
門をあけて橋をわたらせる
ふうけいのもくろみらしいが
門番ならもういなかった
すでに水飴のねばりはのんだ
交響は中途でこそにじんでくる
三千世界、いっせいにこぼれ
かげろうがのぼりゆらぐ
さかいをふたえにするのが
あの橋門のやくわりだが
木をわたるとつつまれるのだ
あいだにあいだをつかわれ
ゆくての花桃はいつもとおい
頰杖
【頰杖】
ほおづえをつけば顔のよこへ
ふるさの鳴るあなができて
まどをとじているのに風もとおり
かたちうるんでいたりする
さわらごち、鰆東風ともらす
うみのかげがほそくなってゆく
きょうなどはかたうでの日
肩をずらしつかれさせて
消失で左右をわける日なのだ
さわらごちはさしもどす
ほおづえもじつはR字だと
おおいところをひかりが添う
仰臥
【仰臥】
仰臥クラブにくわわった
天井は月日の縞をなしている
たかさを他にこそあたえること
みひとつのしめるばしょも
奈落をふさぐ蓋でかまわない
島そのものとおなじはばで
川が島をつらぬいている
岸などないのにそうわかり
みずがたいらになっていった
クラブの夜は島嶼さまざま
ふかいまばたきをなかだちに
さざなみがひきよせられる