湯女
【湯女】
うすぎぬの湯女が
髪をすいてくれ、わたしが
へってゆくのをてつだう
洗われてほそくなり
くろくなることもあるだろう
ぬれるみちたりは
わたしをはだのないひだにかえ
しずくすべてがおもたい
かんがえてころされるのが
架空の人物というもの
わたしこそが人物になり
ゆのなかにただよう
飴棒
【飴棒】
住むくにはみずのうえ
うすくておおむねひかる
みずおもてのひろがる
春のちからを足場にする
飴のにおいがおのれよりして
やるせないがむしろ
形容詞すべてもあまいのだ
水上何センチの幅だけを
ふたえの水としてながれる
あしさきがなぜかはじき
このよへふれていない
名のないことがゆめ
鉄梃
【鉄梃】
Lの型をつづきがらとする
くきをすい、かみしめながら
とことわなどとくちにしてみる
ずがいこつのながい長頭人だ
序詩たらんとさらにのびて
くさやぶとみわけのない
いろみのままうごいてゆくが
てにをはにゆきつかぬもどかしさ
そまみちがかそけくうつる
バールのようなもの、はついに
バールでないままだろう
そんなきざしが序詩にもおおく
後姿
【後姿】
たがいの背後をみとおすように
ひとときをかたりあったのは
詩のうしろ姿がみたかったためだ
遅速をたがえてさりゆくことで
へだたりへふたいろをつけるように
ながめわたる山河のいくつか
ないみつのさだめなどもつたえ
よわみをさらしながらほほえんだ
こころふかくで二頭が洗われ
沢音があたりにせせらいていた
しぎ、さわ、そこからの秋
しぐれのうしろすがたもみえた