非有
【非有】
晩夏のむこうへうかぶ
あきつとはことばだろうか
みはるかすとおくにあり
あるかなたがしめされるが
もうかたるべきではない
地の水をやしなおうと
かちいろのつまにもなる
けれど夕風よろしく
そこからよそへゆくだけだ
ひう、非有と尾をひいて
うすやみはひかりのふたえ
あれこそ線とあこがれる
朝顔
【朝顔】
あさがお帰りをした
ひらくことをあまた視て
このからだもみはった
あおやむらさきがきれい
天童のつかう小用器に似て
つゆのときがしばしある
あさがおのゆくえおもうと
つるこそが問となり
あけぼのへきえかかる
世はみな露台だろう
くさぐさのなかで
あさがおにむけ、めしをくう
遠近
【遠近】
ほおづえはからだとすがたに
ぼんやりと遠近をつくる
つくられた穴こそとおいのだ
星々たがいのへだたりが
とおくあらわれるのとおなじ
ほおづえもしぐさの配置で
ゆっくり箔がめぐる
かんがえがじぶんとは
どんな星座なのか
片頰からほどいた手を
かがやくやんまへかざす
またもゆっくり箔がめぐる