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頭髪形成 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

頭髪形成のページです。

頭髪形成



立教でのそれぞれの講義が佳境に入ってきた。
月曜日の3コマ連チャン。
3限→4限→5限と進むうちに
いわゆる「講義ハイ」になって
自動記述状態で速射砲的に
口から出まかせを喋っている自分にハタと気づく(笑)。
間違いなく、毎週月曜午後に
「世界でいちばん喋っている男」は僕だろう。

喋れば喋るほどに
自分の存在スピードが増す。
これは悦ばしきことだ。
ただし、この午後のほぼ5時間で
自分の体重が1.5キロ程度は落ちた気もする。
僕には、アル中は関係あるが
メタボは関係ない。
メタボ久谷雉よ、君ももっと喋って痩身を実現したらどうか。
ただし、君の得意な、
テレ自笑による派手な自罰的な身のよじりのほうが、
「喋り」よりももっと痩身効果があるか。
だとすると君はもう痩せられないね(笑)。
こーゆーことも
吉増剛造さんの謂う「地獄」のうちに入っているのかな。



話がズレた、テッテ的に。

月曜日の3限目は
文芸思想専修・新一年生用の入門演習で、
一回ごとに変える使用テキストはまあ荘重で申し分ないのだが、
そのテキストをきっかけに出す課題は
このところ、のほほんとしはじめた。
「スパルタ」と銘打っての授業だが
五月の清風に煽られて
講師にも受講者にも疲弊の空気が漂いはじめたのが原因。



たとえば、二週前にレジュメで発表してもらったのが
ロートレアモン『マルドロールの歌』だった。

『マルドロール』では、暗黒小説からの影響の色濃い部分を
2箇所えらび、コピー配付していて、
一班からのレジュメ発表にたいし
ついつい提出さるべきレポートの勘所を「喋って」しまう。
主体が、「僕」(栗田勇訳を使用した)→「彼」→
「マルドロール」に変貌してゆく推移のなかに
インスピレーションで言葉を奔騰させてゆく
ロートレアモン特有の「脱自」「幽体離脱」の症候があり、
この「混乱」によって、
ロートレアモンの小説体も詩文へと変貌している、と。
読者がそんな彼からもらうのは、
「悪」の魅力という前に先験的な「力」であって、
ニーチェとの歴史的並行性を考慮しなくてはならない、云々。



この流れのなかで、
シュルレアリスムの評語となったロートレアモンの例の、
《手術台のうえで出会ったミシンと蝙蝠傘のように美しい》につき
解説も加えた(散文が詩文にもっと変異した端的な例として)。
「直喩」の破裂、破砕。
このくだりは「・・のように美しい」という断定文が
実は連祷のように続いてゆくのだけど
あまりその連祷性が諸家には吟味されていない。
その点へ学生たちの注意を促がして、

さて、くだらないレポート提出をその場で出席者たちに依頼した。
ロートレアモンの直喩破砕の歴史的意義を汲んで
「私は〇〇のように美しい」という構文を30連続させ、
それで全体を詩文として構成せよ。
――これがテーマだった。



さて、ここからが「お笑い」の本題。

当然、受講者のナルシシズムを計測しようとする
講師側の不穏な動機に勘づく鋭敏な者もいる。
そういう者は、必ず講師に匕首を突きつけかえす。
ヤラレタ、とおもったのが、MNさん提出のレポート。
その一節にこうあった――

《(私は)阿部嘉昭のモサモサとした頭髪と
その正反対の髪質のKの魔女ヘアー(のように美しい)》

ゲゲ、こりゃ見事な切り返し。
柔道場の畳にペシャッと「阿部」は投げ捨てられた(笑)。
ちなみにいうと、掲出文中「K」には
「阿部」の大好きなご同僚男性の名前が入るのだが
(わかるひとにはわかるだろう)、
MNさん、Kさん双方の名誉を慮り、
イニシャル表記にさせていただいた。



いったい、俺の髪はどうなってしまったのだろう(笑)。
必ずシャワーを浴びて出講するという
往年の「朝シャン」女子高生のような律儀さを俺はもっており、
従って家を出た刹那には
その髪は「鬘」疑惑を生じるほどぺったり頭皮に張り付いている。
よく女房には「頭がぺたんこになっていてヘン」と指摘されもする。
ところがその日に風が少しあるだけで
乾きはじめた髪がみるみる渦を巻き、
その渦模様を残しつつ、「天を突き」始める。
阿修羅のごとく。
「怒髪天を突く」という成句はあるが
いつでも温厚な俺は「何に対しても怒っていない」。
こりゃ、あまりに理不尽じゃん(笑)。



この事態が悲劇的だというために
俺は自分の「頭髪史」を振り返らなければならない。

【0歳時→1歳時】
私の髪はチリチリだった
腫れぼったい顔もあり
赤子にして「海坊主」の渾名を頂戴する

【2歳時→10歳時】
私の髪は直毛になる
色白、クリクリ目玉、ふくよかな頬と相俟って
「桃太郎」型だった私は
とうぜん坊ちゃん刈りもよく似合い
そこには将来の幸福を約束する「天使の光輪」もあった
私は飛行機乗りの未来を夢見ていた(ウソ)

【ティーン→30代時】
私の髪はビアズレーの意匠のように
はた ペイズリー模様のように 巻きはじめた
「動物性ではなく植物性の巻き」
複雑骨折しはじめた自意識が
喩として髪の様子へと形象化される、
そんな神秘的な悪意のなかに私一個がいた
私のティーンズの頃にはリンスも普及しはじめていたが
髪がネバってキモいと使用を厭った、
そんな思考マッチョでもあった
それでも従来からの「天使の光輪」が護持されていた
大学時代は映画館でもサングラス使用を
「信仰」から励行したが
巻き髪と相俟ったその姿が
絶頂期ディランを髣髴せしめると風評も立つ
私はたしかに倨傲と儚い栄光のなかにいた

【以降の頽落期】
私の髪のなかの水分は
青春のように失われはじめた
項で髪を束ねる初老男の長髪族を
私はかねがね嘲っていたのだが
私の髪はそれよりもタチが悪い
長くなっても巻きがキツすぎて
束ねもできないのだ
むろん私は回春ではなく改悛もした
美容院に行きお姉さん美容師に
シャンプーをしてもらう淫靡な悦びを
その齢にしておぼえはじめた内気な私は
薦められるままにリンスの使用もはじめたのだが
もう「天使の可能性」でなくなった私には
二度と「光輪」が降臨しなかった
いまは艶のない髪が風のなかで
ただ蟠りの藪となり
私は私によって停止状態へと織りあげられるがままだ
往年の私がもういなければ
とうぜん現在の私ももういないのだろう
嗚呼
こぞの光りいまいづこ



――というふうに精神の傷になっている私の「頭髪史」を
忖度してくれることなく
MNちゃんは「美しい」と揶揄してくれたのだった(笑)。
わーん。。。

とはいえ、この挑発にたいし
架空のナルシシズムで報いた私のインチキ詩は
その立ち位置がかなり高度といえはすまいか。



とまあ、徹底的に意味のないことを
近況報告にからめて書いてみました(笑)。
これがmixiに期待されている書法?

最後に、ひとつの素朴な疑問。
ホームレスの方々の髪は
なぜレゲエ・ドレッド・ヘアー化してしまうのであろう。
あそこにも「頭髪形成」の神秘を感じる。

ということで、次回の話題は「ホームレス」。
2~3日後にはきっと書くだろう
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2007年06月01日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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