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武田肇の秋句 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

武田肇の秋句のページです。

武田肇の秋句

 
 
ご恵贈いただいた武田肇さんの第五句集
『二つの封印の書』をひもとく。

武田さんは詩もなし俳句もなすひとだから
詩的俳人の評価も罷りとおっているだろうが、
実際は「俳句知」がとても高い。

それが認識=配置の絢爛さではなく、
心眼の日本性にふれたときに、
ぼくは多く陶然とするようだ。

いまの季節を名残惜しみ、
秋の字の入った秀句を
以下、抜書きしておこう。




跫の足と音とに離〔か〕るゝ秋


うちくるぶしそとくるぶしも秋時雨


「或る時」てふ譚〔はなし〕の端〔はな〕や秋深し


世界中の道の総数あき深し


窪のこる後部座席に秋深し


森を出る人匂ふまで秋時雨


秋深きメビウス坂の出入口


行秋やむかし野方に「野方町」


秋の暮すくなくも吾は四人ゐて




ついでに「秋」の字の入らぬ、
素晴らしすぎる秋句もふたつ。


永劫に林檎うごかぬひるさがり


月を見て眼鏡を置かば月の音




事物ではなく、「春」「秋」のように
季節と季語が一致したなかで俳句が詠まれると、
それはとうぜんメタ的な季節論の風合いを呈する。
象徴性が事物句より上位化するといってもいい。

むろんそれは秀逸な場合のみであって、
月並に堕すとむしろ惨状を呈してしまう。

以前、武田さんを「春」句の名人と書いたことがあったが、
今回の「秋」句のはるかさもふかく胸を打った
 
 
 

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2011年11月07日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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