テレヴィジョンの歌詞 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

テレヴィジョンの歌詞のページです。

テレヴィジョンの歌詞

 
 
来週のロックバンド講義のため
ニューヨーク・パンクの雄、
テレヴィジョン=トム・ヴァーラインの
歌詞を翻訳した。
以前に訳していた二篇とあわせ
下に掲げておきます。



【シー・ノー・イーヴル】(『マーキー・ムーン』所収=以下同)

ほしいものこそを
いますぐ手に入れなきゃならない
それがすべて
いかなることより優先される
たとえば翔ぶこともやりたいこと
ひとやまを越えたい
跳躍をくりかえしくりかえし
障壁をこえるんだ
みんなわかっている(みえない)
自分の破壊衝動を(みえない)
この完璧な体感を(みえない)
そう、ぼくは・悪なるものを・みない
〔※三猿のうちの「見ざる」だ〕

かんがえが浮かぶ
ひとつのイメージが。
一艘のイカした舟がほしい
ふしぎなことにそれは海でつくられているんだ
きみの指摘はわかる
なかなかするどいじゃないか
たちまちうまく反応してくれたね
そのギザギザのビバップ喋りで

おもってないことはいわなくていいし
決定的なこともいわなくていい
そういうことごとを口にするなら
この部屋をおれはすぐ退場だ
だっておれにはほしいもの
いまほしいものがあるだけ
それがすべて
いかなることより優先される

おれは愛する者と荒れ狂って走りたいだけ
そこにぼくは・悪なるものを・みない
愛する者とともに未来だって
未来だってひきずりおろしてみせる



【ヴィーナス】

イカした玩具の夜には 通りがあまりに眩かった
世界は 僕の骨と皮のすきまのようにひどく痩せて見えた
別の人間が少し驚いてそこに立っていた――
とても活気づいている世界に直面して。
僕は墜落していったけど。
「憂鬱じゃないかい?」「いや、全然」「エーッ、何で?」
僕が墜落していったのがまさにミロのヴィーナスの存在しない腕の中だからさ

ホラ それはなんだか新種のドラッグみたいだ
僕の感覚は鋭く 僕の両手は手袋のようだ
ブロードウェイはとても中世風に見えた
それは小さな書物のページさながら パラパラとはためいてもいて
僕は数々の舞台を踏んだ友達とともに ひっくり返って笑った
それが僕の気分だった
「憂鬱じゃないかい?」「いや、全然」「エーッ、何で?」
僕が墜落していったのがまさにミロのヴィーナスの存在しない腕の中だからさ

突然 僕の目がすごくとろんとして ぐらぐらしだす
苦しみがあることはわかっていた、だが苦しみに痛みがない
それからリッチーが――リッチーがいった
「よお、おまわりのように着飾ろうぜ
俺たちができることを考えてみろ!」
でも何かが――何かが告げた、「やらないほうがいい」
そして僕は墜ちていった
「憂鬱じゃないかい?」「いや、全然」「エーッ、何で?」
僕は立ち上がり、歩きだした――ミロのヴィーナスの存在しない腕をふりほどいて



【マーキー・ムーン】

おぼえている、
その暗闇がいかに二倍になったかを。
ありありと思い起こせる
稲妻はみずからに落雷したんだ
ぼくは聴きいった
ふりだした雨の音に耳を澄ませた
すると聴えてきたのだった
なにか別次元の音が

人生はぼくの夜を縮緬状に絞りあげる蜂の巣のなかにある
接吻で死に、抱擁で蘇生するめまぐるしさ
だからぼくは天蓋にある月のもとに佇み、ただ待機する
二の足を踏みながら。
……いや、もう待つのだってやめた

ぼくはひとりの男に話しかけた
その小道で
そいつに訊ねたんだ
「どうしておまえは発狂しないんだ?」って。
男いわく「若造よ気をつけな、よろこびすぎてもだめだが
まかりまちがっても哀しみにひたりすぎてはならん」

ごらん一台のキャデラックが
墓場からひきあげられた
それがぼくのまぢかに運ばれる
みんないうんだ、「乗りな」って。
乗るとキャデラックは
墓場のなかへ引き返し
ぼくとはいえば
またクルマから逃げださなければならなかった



【エレヴェイション】

最後のことばは
語られなかったと
きみはなぜそういわない?

今夜ぼくの眠りはあさく
渚を漂っただけだった
気が昂ぶってアタマが休まらなかった

きみはぼくを思い煩わせたわけではないが
助勢してくれたわけでもない
きみはぼくをからかっただけだった
それがひどくこたえたのさ

今夜ぼくの眠りはあさく
渚を漂っただけだった
気が昂ぶってアタマが休まらなかった

ぼくらの唇は封印をくらったがそれでも吐息は炎上していた
低い水温で荒れる海がぼくらをただ旋回させた
でもぼくは浅い眠りを寝た
〔そうして海底に潜ることなく〕渚を漂いつづけた



【ガイディング・ライト】

僕は――僕は夜に属しているのか
今夜――今夜だけは。
淑女たちはすべて
室内に集う
時は凍結し
世界は泣くだろう
今夜も騒がしく過ぎてゆく
囁きも大声も聴いた
だが誰も助けを求め叫びはしない

教えてくれ 誰がこんな
悪名高い贈り物
を送りつけたのか
そんな約束をするために
そんな間違いをやらかすために
ああ 厭だ
欺瞞を引き寄せられない
突き傷なしの
薔薇なんてありえない
でもそれをどのように言うべきなのか教えてくれ
僕は昨日起きて
今日再び同じ夜に直面するのか

※誘導灯――誘導灯
夜の奥へといざなう※

恋人よ 恋人よ
僕らは海のように別れてゆくのか
とどろく貝殻
漂流する落ち葉
すべての目論見は知られざるまま
今がまさに
玉座から腰を上げる時だ
すべてが経験済みなのに新しさを失わない
誰がやってくるのかに眼を凝らせ
こんな夜は再び来ないのだから

※-※



【プルーヴ・イット】

埠頭。時計。ひとつの囁き声が彼を起こす。
海水はまた匂いを放ちだした。
洞穴。ひかりの波。が夜から現実感をうばい
それが部屋に平坦な曲線を投げかける。
証明せよ。事実だけを。内密にうもれている
この事件を、この事件を。この事件こそに
ぼくはずっと取り組んできたのだ。

まずきみは這う
それから跳びあがる、百フィートほどの高みまで。
とおもったが、きみは深みにとらわれたままだった。
それならきみは聖書すら書けるだろう。
ちろちろ 鳥たちがさえずり
それがきみにことばをもたらす
世界はひとつの感触にすぎない、
きみが請け負ったところの。
よもや忘れてはいないだろう?

いまや薔薇が減速をかたどる
きみはそんな色味のない服を着て
サイコーだ、きみも人間の感覚をなくしはじめる
投影し、保護しろ
温かく穏やかで完璧な日
素晴らしすぎるを通りこした素晴らしさ
一本の指すらそのうえに置くことなどできない

審理終了!



【トーン・カーテン】

引き裂かれた幕のむこうから別の芝居がみえる
引き裂かれた幕の、何という暴露機能
ぼくは確信がもてなかった、いつ美が悪用されるのかを
引き裂かれた幕は嘲笑を愛した

涙――涙は歳月をさかのぼってゆく
歳月――歳月は涙のようにながれる
涙はその背後に歳月を湛えるが
ぼくは涙をけっしてながさなかった
これまで出会った歳月のなかでは

引き裂かれた幕がぼくに一瞥を投げ
引き裂かれた幕が発情にいたる
ぼくは傷ついていない、命綱を掴んでいたから。
引き裂かれた幕はぼくを巻いてねじりあげた

引き裂かれた幕に熊手以上にかきだされる気がする
引き裂かれた幕、いくら支払えばいいんだ、
おまえを炎やすためには

涙、涙――歳月、歳月……



【リトル・ジョニー・ジュエル】

ほらリトル・ジョニー・ジュエルがやってきた
クールきわまりないし
なにも決め込んではいない
思いついたことを次から次に語ろうとするだけ
考えをふかめれば哀しくなるし
気がちがってしまうことだってある
考えなんてものは表面を引っ掻くだけ

JJならゆかへのキスも辞さなかった
ヤツは展示中だったんだろうか
否、否、今日にかぎっては
ヤツはいつものように話さなかった
こういったんだ――「羽根飾り付きのアタマがほしい」
ヤツは夜にはうつらうつらするだけ
アタマのなかでは戦闘の感覚がつづいている
それで夢から跳ね起きる
だがまだ夢はつづいていたんだ……

それからヤツは空港へすっとんでいった
突撃のあまり轟音がひびいたほどだ
ヤツはフェンスのうしろにしゃがんだ
投光機に胴体まるまる照らされたためだ
それから
ヤツは失神した……

おお、リトル・ジョニー・ジュエル
クールきわまりない
万一あんたがヤツの困っているのをみたら
あんたは上司に相談しなきゃね
あんたは知る、ヤツは支払った
あんたは知る、ヤツは対価をちゃんと払ったと。
それからあんたがヤツにすべきことは
気前よくウィンクしてやることだけさ



【キャリード・アウェイ】(『アドヴェンチャー』所収=以下同)

きのうの夜、ぼくは埠頭まで漂流した
水は… 黒びかりしていた
雪もうすくふったが積もらなかった
ぼくは自分を縛るロープがゆるむのをかんじた
ぼくは溶解しだしているらしかった、灯台の光がまわるあいだに。
ぼくはこんなところまで運び去られたのだ。

かつてぼくは一艘の船をもち海図も所有していた
体内には風を湛えていた、樹が自らに樹液をめぐらすように。
それがいまや浅瀬の泥に身をしずめようとは。
ぼくはここまで運び去られたのだ。

あれらの部屋は凍え、いつも暗かったが、
そこでのぼくらは問題にもされなかった。
きみの金色の髪
きみの腕には稲光が走った、それからグラスが粉々になった

深夜が正午だった
だから日がおわらなかった
灯火がまたたき自ら悔いる――
ものみなはぼくが思い違いする以上のまぼろし。
ぼくはここまで運び去られたのだ



【ファイアー】

ひと夏を吹き渡った嵐。ぼくらは風のなかに棲み、
部屋も外に投げ出されかのように吹きさらしだった。
彼らが縛りつけたきみの手。
きみは解いてくれという要求が無駄と知っていた。
ぼくの舌はといえばブリキのようにガチャガチャ鳴った。
ぼくは繰り返し視認した。彼らがぼくの席を奪うのを。
きみの目。それが熱をもつことを辞めていると彼らは評した。
ぼくらはたがいにもたれあった、寒さのなかで。
息をころし、曲がり角から曲がり角へむなしく視線を泳がせた。

卓のうえには硬貨数枚、空中にはカードが散らばり
窓に映る顔はほほえみをかたどっていた。
ひと冬を吹き渡った嵐。ぼくらは幽閉されて
待機、目視、そして転落をしいられた。
通りの行き止まりで地平線が後退した
きみはそれを追おうと駆け、ぼくもきみに続こうとしたのだが。
眠りはもう眠りといえず、ぼくの目も見ることを繰り返すだけだった。
きみは激しい情をえらぶ。それがさらに見る、きみの泣くのを。
きみは泣き声をおさえた。ぼくもその閉鎖を聴いた。
それからぼくに聴えるものは木霊だけとなった。

空疎をたたえよ。
彼女の薔薇色のドレス。
それが彼女の動きで回転する。
すべては破砕されたが、何も失われていない。
ぼくらは自分たちの館に火を放った。



【マーズ】(『テレヴィジョン』所収)

おれには教育が要るんだろう
ぐうぜん夢みているあいだにこそ何かを掴まねば
むかしきみの声を聴いた
人工的な声だった、だがもう忘れてしまった

おれの腕のなかで彼女はぬくもり、滑らかになる
天国のようなうごきをしるすその骨格
(割れ目もうごきも、その心地よさといったら!)
おれは真実をさがしてくるう陰茎にすぎない
だがこれを捕まえるcopなら火星だ、火星産のようにすげえ

火の玉が空中でおどりくるい
それがいたるところに飛び火する
もえたぎる泡であたりがあかるくなり
一晩中おれの肌をとおして拡大される
起きろ! 珈琲を淹れようじゃないか
珈琲を
珈琲を飲む時間だってことだよ

きみのためなら何度でも逝けるさ
きみのためならひと晩に何度でも逝ける
 
 

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2011年11月17日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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