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バリエーション ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

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バリエーション

 
 
引越し後の家のなかが、書架も本も(オーディオもビデオデッキも)ない黒沢清的「がらんどう」だとは前言したが、前住所から本の届くまでのつなぎとしてもってきた本が中公クラシックスの『スピノザ』(『ライプニッツ』が素晴らしかった余勢で買った)だったりちくま文庫のテーマ別『カフカ・セレクション』全三巻だったりして、単身赴任開始直後の不安にたいし重たすぎるのも問題だった。それで昨日は学校(ガイダンス出席)の帰り、大通のジュンク堂に行って、軽く読めるエッセイや詩集などを慰めに買った。最初にひもといたのが荒川洋治『詩論のバリエーション』(学芸書林、初版は89年)。80年代後半、まだ詩論を、別角度を用意して「熱く」書いていた頃の荒川さんの、それでも素軽い詩論集。レトリックの「工夫」は花田清輝をどこか髣髴させながら(立教最後の年の二年次演習の題目が花田と荒川さんだった)、それでも全体は当時​の荒川的な「不敵な飄逸」と渾然一体となっている。思考方法じたいに数々の創見があったうえで、まだ詩のディレッタントの構えが崩れていないから細部いろいろが目覚ましい。男性化・過剰論理化しないから「余白」もあって、詩論のことばとしての荒川的理想がつらぬかれているのに唸った。いまごろ初読とは恥しい。このことばづかいをもっと早く知っていればよかった。ぼくの詩論も変わっただろう。またこの本の語りの方法がもっと普及すればよかった。大きくいうと女性以外​、90年代を領導した日本の詩論は男性的に硬直していただけだった(むろん藤井貞和、辻征夫などの例外もあるが)。荒川『詩論のバリエーション』、若いひとにはとくに必読だとおもいます、文字どおり詩論には「バリエーション」があってしかるべきなので
 
 

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2012年04月06日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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