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丹頂 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

丹頂のページです。

丹頂

【丹頂】


失地を回復しようとして
田上に丹頂は降りる
はためかす翼が背景におよび
いまし田野も翔ぼうとした

睛の周りに点じられた真紅が
地上に変わらない千年を見据える
あらゆるものが赤かった残欠
補色から補色へ跳ぶ、記憶の正統

さばえ、唸り上げるものに
風景が近づける神を生じて
眩暈とともに頭上も黄金ニ入ル
鶴は翼をさばえなそうとして、

その嘴からは蚯蚓をぽたぽた落とす
災難だった――芹田に芹なくて
翼の匂いから草が湧かないのは。
空に棲むまえが湿地の一族だったのに

空を飛んで全身は冷たく凝血した
罅割れが空の罅割れを長く渡ったあと
片脚立ちしたその全身、鱗の遠近法が
風景を割って出る坂を密かに形づくる

お聞き 空には坂があまたある
わが姓は「空坂」 名は永代なし
人語を超えた語も叫喚でしかなく
遠くと遠くを結ぶ のみどが血塗れ

知るか 沼など空からは穴に過ぎぬ
地軸の傾きを身にべったり帯びるために
二羽で墜落を遊戯することもあるのだ
季節を統べる驕りはこの地軸感知による

あるとき地平に季節種が一斉に出て
その一種にしかないことは、事後の何か
翼の熾す孤独な電流に空が染みて
その影のもとにしか人間も頭もない

ささくれて天と謂えばいいのだろうか
天に八岐もあると告げればいいのか
翻意を洩らすまえに灰を帯びた双つ翼は
あらかじめ今生の身に別れていて惨憺

空に飛び出しわさわさする身に罅が入り
その亀裂が 風の遊び入る浮力となる
この姿が一個の懇情などと高を括られては
やがて雷鳴ニ入ラントスル矜持がすたる

こんもりした地上にいっとき留まって
婆沙婆沙と騒ぎ 鳥骨の構造を自ら砕く
骨は翔ばない、精神が浮力を得るのみ
溶ける大らかさで空とともに悲遊する

大悲と呼ぶにふさわしいこの恩寵は
我が身と背景から切にもたらされる
ただ種族の掟は「一過」にも満たない
おまえの眼にただ傷をつけるだけの

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2008年01月15日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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