ワイルド・ホーシスほか
木曜のロック講義のためさらに三曲を訳出。基本中の基本で恥しいが、これも下にペーストしておきます。
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【サティスファクション】
*不満だらけだ、あきたらねえ
欲求不満からのがれようと
なんども何度もオナってみたが
からだの不足がおさまらない
クルマをながしカーラジオをつければ
くどくどとDJが意味なし喋りをつづけ
おれの想像力を黒焦げにしちまう
ヘイヘイ、言いたいことはそれだけ
*
TVをつけりゃ胡散くさい野郎が現れ
自分のシャツの漂白法をとくとくと喋る
けど奴は(服をしろく保つため)煙草を吸わないんだろ
おれのような安煙草をさ
ヘイヘイ、言いたいことはそれだけ
*
そこらをぶらついて
これをしちゃ、あれにため息ついて
おんなをひっかけてはみたものの、いわれてしまう
「おととい来やがれ」って
おれが連敗組にみえたんだろうな
ヘイヘイ、言いたいことはそれだけ
あきたらねえ、みちたりねえ、
欲求不満で、はちきれそうさ
【黒くぬれ】
赤い扉をみればイラついて、黒く塗りかためたくなる
ほかの色なら無駄だ、真っ黒にしたいだけ
*夏の薄着で着飾った女の子たちが驕慢に通りすぎる
途端そのままじゃヤバいほどアタマのなかが真っ暗になる
クルマが渋滞してればイラついて、黒く塗りつぶしたくなる
花で飾るとか愛でかがやかすとか、もうできないんだ
おれのヘンな気配に気づき奴らは振り返り、サッと値踏みする
それで産まれたばかりの赤ん坊をみたように驚くんだ、毎日のこと
自分の内面をのぞきこめば、心が漆黒とわかる
赤い扉をみれば、ともかく黒く塗りかためなきゃならない
たぶんおれが消滅したあとでようやく気づく
おまえらの世界を真っ黒にしたと誇るのも簡単ではないと
もはやおれの緑の海すら昏い紺となる
おまえにもこんな感覚異変が生じるのかは予断できない
*
おまえたちの顔をみれば真っ黒に塗りたくなる、
夜みたいに石炭みたいに、かぐろく
太陽なんかみたくない、太陽の向こうまで高く消えたいんだ
くろく黒く黒く塗りつぶされた絶望だけみたいのさ
【ワイルド・ホーシズ(荒馬の群れ)】
子どものころは日々生きるのが、たやすかった
ほしいとおまえがいえば買えるものばかりだった
ぶしつけなご婦人はそんなおれの正体を知っていて
彼女を手放せないおれのよわみも見越していた
荒野を奔る馬たち、できればおれをどこかへ連れ去ってくれ
できればおれをどこかへ、荒馬たち
おまえがにぶく疼きつづける痛みにあえぐのをみた
それはみんなにあるものだとおれにしめした
人払いもいない、舞台がはねたあとのひと波には
だからつらくなり、おまえに当たってしまう
荒野を奔る馬たち、できればおれをどこかへ連れ去ってくれ
できればおれをどこかへ、荒馬たち
おまえを夢みつづけたことの罪と虚偽
やっとその束縛を解いたが、もう残り時間もわずか
信義がくずれ涙を禁じえない
死後にしか生き生きと暮らせないのらそうしよう
荒野を奔る馬たち、できればおれをどこかへ連れ去ってくれ
いつかおれたちは通り過ぎるだけの荒馬を、駆ってみたいのだ