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今クールのドラマ ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

今クールのドラマのページです。

今クールのドラマ

 
 
なんか今クールは秀作TVドラマが多い、というのが、放映第一回を観終わっての感想。今後も観ようかな、とおもっているものを以下にメモします。

●ビブリア古書堂の事件手帖 フジ 月曜9時
鎌倉の古書店を舞台に、古書に隠されている売主などの人生模様を、推理物タッチでさぐる。スローモーだが抜群の知力をもつ若い古書店主に剛力彩芽、その相棒となる「本の読めない」失職者にEXILEのAKIRAという布陣。月9枠ドラマでこんな丁寧な照明ワークに接するとはおもわなかった。ただし配役はパンチがよわい。原作は三上延の小説だが、古書マニアからすると古書をめぐる逸話、そこからの推理過程に綾、ふくみ、専門性も足りない。これはもう一回観たらやめるかも。

●いつか陽のあたる場所で NHK 火曜10時
前科もちの上戸彩と飯島直子が、出所後の新天地・谷中でけなげに人生構築するという基本ラインらしい。原作・乃南アサの古典的なドラマだが、人生に積極性を欠くというドラマ開始当初の、上戸彩の暗い表情に惹かれた。彼女は一家を追われ祖母ののこした旧い日本家屋に居住、それで成瀬映画的ショットが偶然なのか参照なのか舞い込む。ただしこれももう一回でやめるかもしれない。

●書店員ミチルの身の上話 NHK 火曜10時55分
ぼおっとしているというかシレッとしているというか、ともかく生き方のいいかげんな女が運命の翻弄に巻き込まれてゆく、ジェットコースター的にしてオフビートのコメディらしい。自分の見え方に無頓着な頓着がある、という役どころでは抜群の味の戸田恵梨香が主演。宝くじ当選の大金をせしめるという幸運にはんし、今後の彼女は柄本佑、新井浩文、高良健吾、大森南朋などのあいだを渡り歩くことになりそう。そんな運命的淫乱を受難劇にかえられるのも恵梨香さんの可愛さあればこそだ。原作は佐藤正午の小説で、演出はテレビマンユニオンの合津直枝。NHKらしからぬ伏線と飛躍の多い、スピーディで高偏差値なドラマ。

●最高の離婚 フジ 木曜10時
四角四面で几帳面な(空気読めない)厳格主義者・瑛太が、ズボラきわまりない妻・尾野真千子に嫌気が差しているタイミングで、かつての同棲者・真木よう子(こっちは親切で神秘的)に再会して…という三角関係ドラマ。スピーディなカッティングによるサイレント映画的なつなぎもある。むなしく多弁な瑛太が、それでもバスター・キートン的な喜劇性をもつのが妙味。前クール『遅咲きのヒマワリ』に較べやや大人っぽくなっていても真木よう子が相変わらず可愛いが、ズボラで髪型めちゃくちゃに身をやつした尾野真千子も仕種中心に、動物的に可愛い。脚本・坂元裕二、演出・宮本理江子という手堅い布陣。たぶん最終的には高度な「結婚論」「離婚論」が飛び出すのではないか。

●夜行観覧車 TBS 金曜10時
ビバリーヒルズならぬ「ひばりが丘」という憧れのセレブ分譲地に無理して住まいだしたロウアー階級の鈴木京香一家が事件に巻き込まれる。つまり地縁抑圧というコメカミの痛むようなテーマだ。サスペンスドラマの撮影とは何かをスタッフが知っていて一発で惹かれたが、このところ『贖罪』『高校入試』と、TVとは相性のいい湊かなえ物でもある。最初に事件を提示、その後、象徴となる観覧車の建築過程(順行/逆行)を挟むことで、現在/四年前の時制往還がおこなわれる。このパズル的な時制シャッフル話法の鮮やかさに感心していると、脚本はやはり奥寺佐渡子だった。たぶん鈴木京香にたいし今後親友から敵役になるだろう石田ゆり子にドラマの伸びしろを予感する。悪役セレブマダムの夏木マリの灰汁の濃さは、もしかすると往年の「冬彦さん」的なブームを呼ぶかもしれない。刑事役に高橋克典。

●まほろ駅前番外地 テレビ東京 金曜0時12分
これは女房と一緒に観る約束でまだ観ていないのだが、例外的に継続録画にしてある。三浦しをんのシリーズ小説が原作で、おなじ原作の大森立嗣の映画『まほろ駅前便利軒』のキャスト(瑛太/松田龍平)を引きついだ、珍しや、映画→TVのスピンアウト。映画はさほど買わないが、TVドラマ化に当たっては『モテキ』の大根仁が演出に起用された(脚本も)。TV版『モテキ』に熱狂した身としては期待大だ。瑛太は今クール二本目。撮影は『最高の離婚』よりこっちが前だろう。

●泣くな、はらちゃん 日テレ 土曜9時
子供向けカルトSF中心のこの枠だが、水産加工場で働き、自室でこっそりマンガを描く麻生久美子がヒロイン。そのマンガ世界が現実に入れ子幻想的に飛び込んでくる。マンガ世界の主人公・長瀬智也が、麻生久美子に対人積極性と人生肯定を植えつける「主人励起」ドラマみたいだが、「バカ」をやらせれば最高の長瀬の演技、それと世界観を設定しておいて面倒な部分は不問に付すドラマ進展の疾走力によって、笑える。ドラマに使用されるマンガはビブオ。知らなかったがしりあがり寿のカルトマンガの画柄を髣髴させる。これが接写コマ展開されたり、CGをつかって立体化されたり、現実と合成されたりというギミックも愉しい。ギャグ偏差値、忽那汐里、奥貫薫、薬師丸ひろ子といったキャスティングのこのみから脚本がクドカンではないかと予想したら、意外や山田太一の後継者・岡田恵和が脚本だった。人生派からの宗旨替えか。いやその片鱗は、長瀬が一回目で唄った、出鱈目ながら泣けるフォークバラードの歌詞にみとめられた。笑わせながらも真面目なドラマなのではないか。そう、この枠特有の「悪意」「ルサンチマン」が消えたことで、久々の好感ドラマとなるかもしれない。

●dinner フジ 日曜9時
オーナーシェフ風間杜夫の三ツ星リストランテが、風間がクモ膜下出血で倒れたことで、たちまち味を落とす。風間の娘である支配人・倉科カナは、窮地をしのごうと風間とおなじくイタリアの名店「テレーザ」で修業した経験のあるもうひとりの男・江口洋介を新料理長に迎える。以後、江口は料理人たちや倉科カナたちに厳しい料理哲学と技術を伝授するという展開だろう。つまり松嶋菜々子を江口がしごいた『救命病棟24時』のリストランテ版。リストランテ内の面々には松重豊、ユースケ・サンタマリア、八嶋智人、志賀廣太郎など。冒頭、俳優たちの料理する手の交錯をフラッシュ編集気味につないでゆく映像のアレグロ音楽性、それと音楽の入れ方から予感したとおり、名手・星護の演出だった。星演出には『高校入試』的な静謐調と、『世にも奇妙な物語』的な交響性=幾何学美=バズビー・バークレイ調の二類型があるが、『dinner』は後者にちかい。しかしこの演出法が料理ドラマにも適合するか、予断をゆるさない。眼と眼のあいだの広い抒情、という新しい個性を体現している倉科カナが、いまは若手でいちばん好き。ドラマごとに演技力が飛躍的に向上しているのも眩しいし。
 
 

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2013年01月20日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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