虎の虚数 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

虎の虚数のページです。

虎の虚数

 
 
【虎の虚数】


いいかえると群れのまえに個物には模様があって
それが群れのなかでおどっているということだ

けれども虎はおおむね一匹の孤独であらわれ
まわりの竹林と模様の和音を奏でたりなどする

しられるから吼えない。それでバターになるのなら
あふれる笹葉を眼にうつすのもなにの尖りなのか

たまらなくなって身を竹の節ぶしにこするとき
さやさやと天心の月が植生とともに鳴る。鳴って

笹鳴りとおなじいおのれに虎はひろがる空洞をみる
ぽたぽたしずくする青いろも月からてらされて

なにかふかいものが叡智に脱落しているとおそれる
おのれの縞をここで歯どめにするしかないのだ

うしろからみるな肛門の下には巴旦杏があり
それは縞よりもさらにいきる模様を裂いている

そこだけがしろくオスのようにけぶっていて
まるくめつむった霊魂のいくつかをひりだした

母なるうつくしい虎の、うつくしい虚数とは
空洞をもちい似すがたを雷鳴にうみおとしたこと

ひとときの苦境をおえれば即座に身をたちおこし
なにごともなかったあかしで咆哮してみせた

そだてはしなかった。横になりきったかんがえがあり
みひらきだした霊たちが死児のかたまりにみえた

ずっと壮大さを一個にまで統合された神経だった
それがおもむろによわまってゆく霊の粒を予想した

おもううちにまた空洞は神経とへだてなくむすばれ
笹葉を寝床にした夜の寝そべりがおのが餌となる

とどまってうごかないしずかさだけがおのれだ
肢八つ頭双つでした種族の本能すら何だったのか

たしかに蛇の流儀で縞は狂おしくまざった
だから種族の模様も死後の地につづくだろう

いまは縦すじの竹むらと和音をなしてねむるだけだ
つかれやさしく、ひらたく伏臥した虎丸となって
 
 

スポンサーサイト

2013年03月17日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












管理者にだけ公開する