くやしたさんのふたつのからだ
【くやしたさんのふたつのからだ】
くやしたさんのふたつのからだの
うちひとつがしろくうるんで
どうやらやなぎの春がきたらしい
からだふたつで隻眼をあらわしている
しろめがたまごのようにひろがって
われるすんぜんにいるのだとおもうが
白磁などというひゆはつかわず
うるむかたほうは水よりもゆらめく
その立ち位置がすでにやまいで
どきどきするこころが春情になる
日のつづき、あたしかわるのよ
からだふたつは踊っていれかわり
あたしからあたしがでるのよ
いれかわるから黒もみえたりして
ロシアの下着つけてるみたいだ
「さしいれる」という動詞が好き
あるいている木の橋そのものに似て
くやしたさんはくやしたさんをわたす
花はないけど手をのばされると
そらにひかりのつぶがあらわれて
なんとこけっとの古典とは
服につつまれたわきのしただった
くやしたさんのからだふたつで
いったいがこもれびみたいになり
きょうは雪をふまずにきたの
わらうと耳のあることもさみしくなる
くやしたさんの三つ編みはなんの伸び
それを引くとおどろきが出そう
まわるためにうまれてきたひとさ
からだふたつとしてまわりつづける
どちらかを好きになることは
むろん両方にひきよせられることで
だからくやしたさんのふたつからだの
いれかわるあまいおんがくが好き
ぐるぐる手回し、ぐるぐるしろ黒
舌にいれかわってゆくあまさが好きだ