四大によるわかれうた
【四大によるわかれうた】
ひるの時間をものうく映している
しずかな、水のような顔が眼前にあり
おそらく形象とはかたちそのものではなく
みずからにすこし遅れる淀みだとおもう
石のようになげられた風で紋ができても
いまが何かなどいっさい判読できない
ひふは情をつつむかにおもわれても
ひふそのものが情となってくぼむのだ
渦中をのむひとの、仕種のちいさな舟
やがてそれはきえる汀へと移動してゆく
このことがうごきのほのおとなるから
水火のあいだにはあらゆる誤認があって
木片がそらをゆくとみとめるのも
やがて鳶の春がくるといいなおせばいい
きみのひるはこれからどのピアノのまえで
ゆびさきのまに木片をかがやかすのか
鉋くずやおがくずをうまそうだと誤認した
ぼくは音をきけばすぐに木のひとになる
そのような直立でただゆれるものは
地上のろうそくになることをねがうのだが
水に多くかたむく水火のうるわしい顔は
もえることをあいまいなやけどにかえてゆく
水によってもえるもの、たとえばものがたり
ぬれ髪のひとがかわくまでのうすさを
ここからする、とおいながめとみつづけて
みつづけるなかに目の砦をつくってゆく