ひるまごえ
【ひるまごえ】
のりなどをこえてゆくうごきには
膜をつきやぶるようなふくらみがあり
ひとつの浸透となったじぶんにも
たずさえている多数があると気づく
この樹下からあの樹下へとわたしてゆく
そのことだけにもいわば峠をかんじ
ふみぬくのは中間ではなくニラの透明だ
水平の移動はわきいずるものにとける
もしもじぶんが伝達であるのなら
とどかない旨をつげるすきまのはがき
こえるうごきはその超えを束にして
杣道のすすみもただ、ひるまごえとなる
ひるぜんという地名のひびきをこのみ
野蒜をつみ、わかれる逢瀬をおもう
そういう山があのあたりにはあって
さびしいニラの花もゆびをさそうのだ
わけいって、かぎりを足がぬれてふむ
この身のうえをひとつの味噌とかんがえ
ひとの尖にあるニラのようなものすら
かすむまなこのなかへ草としてゆく
ひるまごえは昼をかがやく毛に負って
そのうしろではいつも声がながれる
しずかさに内心をよせるしかなかったが
声をけす諦めでからだがまた得られる
ニラ、野蒜、ゆれてにおうもののあふれ
まるでひとのようだ、たらのめも吹く