古代のしをん
【古代のしをん】
おんなというものはさほどかわっていない
ふるさのなかにさだめられている揺れだ
瘢痕からうまれて瘢痕をこだまさせるように
すまいのなかをわたってゆく足音のある生き物
すりあしにみえるほんのわずかのすきまに
ひかりをにじませていて、おんなははだしだ
まなこが川棚のかたちをおしんでいたり
春の池から階段をもちあげようとしている
きせつはずれに折れ枝をせおう日になれば
ならぶ坂越えが少年の群れとなり、こぼれる
こころにみがきあげるろうかんを朝にして
とおい透明にむけ、さゆをのんだりしている
くりかえしをみあげたりするとわらうらしい
そんなことをあかしするために桜桃もあるのだ
おもわれているほどには鏡のなかをみない
奥ふかい硝子のすべてを万緑とあきらめている
ほおにみずからでないあかるみがあって
ときのおわりまで視力をつづける凛のもの
たべさせる迎えにほころびのうごきをみたし
寝床や卓にみたことのないはちどりをならべる
うしろすがたにひとしずく甘露がこぼれる
珠のゆがみあるそのあたまが繭となりぼやける
くずれなど、やさしいことをかんがえている
熟れたあとの罅を字のようにとらえ返している
さいているひかりの音とかたる、むしろ
なゐはおんなにあるのでききちがえではない