腑分け
【腑分け】
ふわけのおそろしさを遂行している
めぶきはじめたやなぎにたいして
ながれている日はいつも眼にたりず
さくらのはらわたをみあげる幸をねがう
うつくしいむすめたちの髪にも体温があり
それがひかりに照ってくずれるのをみる
だからみずからがるつぼのなかに置かれ
たれてくる髪がこもれびのたぐいをつくるのを
みることのマゾヒストみたく切望するが
おもいのなかからはわらう顔がきえている
ふぇちとは嗜虐の眼にせりあがる無
せかいやからだに空白をあけているそれらを
ひとから離してせかいのしぐさとただよぶ
かの女らはむすめたちとしてふわけされている
それらがうつりゆくままであるならよいが
近景の髪が、遠景の髪とむすびあってはだめだ
そういうのがこの眼にははらわたとなって
胃と肺がつながるおそろしさをかなでる
ふわけとは楽譜からひとつの音符をうかばせて
樹下のくうきに木管のこえをひびかすこと
みちたりたひとりですることなのだ
寺のような胴からはらわたをとりだすのは
きもちわるい群れのひとりといわれる
ほんしつである刀身がにぶくきらめいて