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三村+阿部50行詩 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

三村+阿部50行詩のページです。

三村+阿部50行詩

弟子にして有望歌手の三村京子さんと
(三村さんは4月13日に新譜発売)、
「なにぬねの?」の書き込み欄に既報のとおり
華々しい「詩の実験」をした。
相互に一行ずつチャットをつかって詩行のやりとりをして
つなげて全体の詩篇をつくりあげるという試み。

で、できあがったのが以下。
トータルで50行。
少々乱暴だけど
連句につうじる呼吸もあって、面白い仕上がりだとおもう。

どの行が三村さんで、どの行が僕だかわかりますか?

もったいぶってもしょうがないか(笑)。
――三村京子が奇数行で、阿部嘉昭が偶数行です。

この試み、こんご参加を募ります。





【此の世が太鼓になって】
三村京子/阿部嘉昭



洗って洗って剥げた身体に、紙を漉きだす
流れでる巻紙には夜明けの文字を書き流すかもしれない
ここから何を? 銀河の手本を嵌め込んだ、最後の頁で
断髪のわたしは来歴の最初をただ「渦」にして滲ませた
待つのは審判か、回り続ける黒焦げのオドラデク
橋は橋である自分をふとやめて とおく谷底に砕けた
遠くで女の叫び声もする。踊る川水は速度を増しながら
さかのぼってゆくと滝壷のうえには世界が億万並び立った
光の淋しさを前に、掌の奥で、運ばれてゆく音を聴いた
左右のいろの違うわたしの瞳は点滅しつつ爆発を起こし
破片の流れゆくのが見える。泡の糸で手繰りよせては消え、
消えては現れる洗い汚した下着を洗剤で千に裁断する
洗濯機の中にアイスキャンデーを常備しているので、
水玉模様のスカートには事欠かず、日傘も丘にまわる
家を出る時に、脚の片方が無いのに気づいて
駅に集まったあらゆる落とし主と仲良しになる、猫好きの。
水玉を猫に与えつつわたしが猫になってゆくのを知る
開闢の噂を語りあうふるさとの訛りが鉛よりもなつかしい
猫語、水語、昨日の飲み残しの乳。あなたの身体に乳を塗り
みんな舐めて便器ではないほんとうの泉にたどりつく
みえるのが黒い渦だったから、そこへなんども唾を吐き捨て
足許のものは透明な壷にした。「裕美、何度も生き返って」
泉水に触れたわたしの片脚から天上のオーロラが翻る
「拓郎、何度も死に変わって」、続々と来る薄緑の霊柩車
逃げ出す彼の屍。壷が歩き出し、自ずとわたしの骨を納め
一切合財が収まってわたしの夏も盆地を長なが行列する
仏に被せる白布のうえに米粒の人々が泡立っているので
縮むくだものにミルクをかけて伸びる咽喉へと掻っこんだ
せつないです。甘い味が、虹の向こうへ。足袋が剥けて
脚も剥け胴も剥け 幹になった猛暑がせつないです
顔ものっぺらぼうになって明りの灯る祭りを通り抜けては
無名の境遇を細長い鬼たちと分かつ。天の気分で草が揺れた
たのしや。雷を齧り、此の世が太鼓になって
「車」三台で ゆかしや、援交都市も平気で轟く
「指三本」で、今夜はどう? なんて寄っても軽くいなして
聖書にいわく「お前が援助すべきなのはお前自身だ」
身体半分、頁をめくって読んで。だけどそばから縮みそうで
「手乗り」となる身分の少女たちは花粉を台風に飛ばす
朝顔の蕾の影。胚種から灰の女に変わるだろうか
いや胚種はとおい面影、そこからは収穫期の女神が微笑む
胞子の階級へ貶められた絶望が、彼女らを死の地へ囲い
やがては薔薇の一揆が川のあふれる畔にも音連れるだろう
それとも手を繋いで、せーので線路に飛び降りるか百人自殺
乳首も空間に飛ばしちゃえ どうせ此の世は模様だもの
鏡張りのここで何重にも現れ 木霊する 声が 身体が
しずくする国家が 少女が。鏡の森ではアリスぐるぐる
これが身体なのか、これはあなたなのか、謎解きを
何にせよスペードの女王は両性具有だろう アメリカだ
今から始めます。手術でしょうか。勉学でしょうか。
あすは手術を。肺に百合を。ひとみなに学びのともしびを

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2008年03月12日 現代詩 トラックバック(0) コメント(0)












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