散文23
あらたにつくられる楽器は、一個二個と算えられない点では樹林をおもわせるが、家そのものに装着されることから据え付け家具とみなされるべきだろう。鍵盤によらず、十人ていどの手で奏される作用部はあくまで弦によっていて、そこでは小石を混ぜられた水が可聴範囲ぎりぎりしずかにひびく。すべての音は音階から自由に、しかもおくれてあらわれるので、意味にならないことばを聴いている気もする。そこで生きもの特有の不如意がなぞられる。その家におもむかなければひくことも聴くこともできないので、歓待と離れられないそれは、渓流と名づけられている。別名、脳。