メモ36
おさない恋にこころを焦がす日々、えらばれて読まれる本からは愛しあうしぐさのまぼろしが湧きかえってくるだろう。それじたいを読めないもどかしさと痛ましさ。しかも本は複数だから、やがては集団の恋のかたちへこころの蝶がとらわれてゆく。恋着はあのひとそのものに反映されているのではなく、あのひととさらに別のひととのあいだでゆれているとみえるのだ。結局つっかえ棒によってかこまれた埒に、ゆがんだ恋がかしぐだけと、移動をつうじ知ってゆくのは、蝶を終えたあとのからだの独立によってだ。それまでのからだは息を吸いきっていない、うつくしい未遂にすぎない。