メモ37
わたしらが、あるもののみならず、ないものへもはたらきかけをするのならば、わたしらの手はどんな石狩をさすっているのだろうか。うごきはあるがミメーシスのないそれはダンスかもしれず、詩において手は川ともみえる聯間の空白から、砂洲のようなものを掬い、たしかにぬれる。詩をなしたひとのからだを映すべきはその断たれた郷で、ないおもかげがあるおもかげ、などとはじめの沢くだりもさいごに、さかいのない有無をもってさらにあぶなくひかってゆく。砂嘴をかたちづくり、書き手のいないことが読み手のいないことへとそうして胸いっぱいに反射する。そこが河口であってほしい、浪だけがのこるから。