秘められた生6
性愛のただなかで起こるのは、現下の相手がおんなであることへの羨望だ。それは腕を巻きつけ落下の最中にいて、しかもその落下を開花させている。水中にいるようだし、記憶そのものにも似ている。間近なのに対象性があやうく、その混濁は、混濁なのに澄んでいる。さいわいと快楽のあいだにかくも捷径ができていて、ひとのなす空間がその内部への捷径にすぎないとおもわせ、ねじれていることがそのままうつくしさだとも感嘆させる。瞑目が花色だ。いずれにせよこちら側は、相手へ折りこまれた遠近により、媒介というよりも「消失してしまった消失点」へと墜ちる。この自己解消がおおきい。つまり相手への羨望はそれから文字どおり、こちらを少しずつおんなにするのだ。隣接をつなげている組成におずおずと触れて花粉まみれになり、ぜんたいの視線を触手にして惑乱し、それらもろもろが装飾にさえなることが、こちらへあらわれた雌性に、さらに拍車をかける。わたしは相手を逃さないために相手と混ざる位置そのものへ変わってゆく。