秘められた生10
きみの言語にはまなざすことでは填められない穴があり、それもいたましい陰裂といってよかった。まわりにはみだらな髭がはえ男性性もみてとったが、うけいれるだけの貪婪には知恵の表情がなかった。情だけがあまっている裂け目は眼にくらべなんの特異性でもない。まねることが挿されることで、この交換によりたえず面前に貨幣がよびだされた。それでも喚びだしながらみずからを喚びかえ、そのたびきみの眼孔がうつくしい量感でみちた。再生こそが陰裂というかたちの潜勢だった。ぼくは職業柄、そこからモノクロ映画の二元反復をかんがえた。ひらいて、とじるすべて――眼と陰裂と映画。それぞれはきみの言語を旋回する、そらにぞくするとおい母娘だった。きみは三つのもので、じぶんのすべてを眼瞬きしていた。