秘められた生11
髪へのくちづけは、髪そのものに触感がないのだから、毛根と地肌をざわめかせ、あいまいに隠れているだけの場所のゆたかさを、知らしめるいとなみかもしれない。それは、ないものをさがすようにかならず連続する。一点にとどまらず這いながらうずまりながら、こちらのくちびると鼻もつながる。そうした連続でなにかの点火にまでおよぶとすれば、あいまいさのおおもとが脳にあるとつたえる「間接」が、すがたにえらばれているともいえる。耳介にも頬にもふれず、立ちすがたで髪あるいは神、または神経への愛着を、くちびるをもちい、しるしつづけるとき、肉と霊の中間にふれるこの身が、ひとつの点燈行為になっている。それをくらい窓に映せば、さらには降雨にまでなっている。