演奏
【演奏】
複数とは単数のとりうる最後のかたちで、きけば列すら列のととのえにふかく割れている。それら成員がみなおなじ存在なのは、じつにおどろくべき聴界だ。みぢかの葉もそんなおなじさとして、てのひらに砕けていて、なんだろうこれが声の粒を強圧的なルフランにかえた、おんがくのなれの果てか。ひとつひとつの縦にも横がのびていって、音のはじまりの充満するこれが、てのひらの割れてしまうことだ。はじまりがそうなら、音の中途もまたつかんでいない。複数の時代はながく、いったんあらわれた最後にすらその終点がないのだ。いつも終点のてまえにとりどりえがかれるよろこび、楽器にふれる手はもはやこれだけを慎重にゆらしている。