物語 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

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物語

 
 
【物語】


馬がりんごくへとわたしを曳いた。たいりくには国境がしろくながれ、そのとうめいな緩衝地で、むらさきの草を嗅いで憩った。きれいなおんがくがわいて、わたしをふくめなべてが馬のように、はだかだった。くにざかいは馬蹄形、つまり虹のかたち。彎曲した架橋などないとおもっていたのにそうみえたのは、ひそかに馬のひとみをじぶんに装填していたからか。川そのものも円周していたようだ。ゆあみと洗馬をしていたゆうぐれ、きれいなちぶさと旅人にいわれ、馬ともども髪を編んでもらった。




年末、喪中が2012年と錯覚し、廿楽順治さんに賀状をだしてしまった。数日前、その廿楽さんから欠礼案内の封書が届く。一枚紙をひらくと「馬」と題された詩。《馬があった/からだじゅうに穴があり/走る町ができた》という魅惑的な書き出しだった。それにしても今年の賀状は干支の「馬」を主題にした詩歌がおおかった。巳年ならこうはいかないだろう。

今日は、ずっと積読だった江中直紀『ヌーヴォー・ロマンと日本文学』を読んだ。芳川泰久・渡部直巳・すが秀実・重松清が編んだ江中の遺稿集。ヌーヴォー・ロマンのみならず、中上健次論、石川淳論、柄谷行人の文体論などすばらしい考察がたくさんあった。テマティスムの功徳のようにみえるが、じつは緻密な文体で読ませる繊細な才能で、小説論で彼を代替するひとがいまいないのではないか。八〇年代評論の結晶ともいえる。巻末に書誌が載っていた。それをみるとおもう、全集とまではいわないが、遺稿集第二弾が編集されるべきだと。
 
 

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2014年01月19日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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