一帯
【一帯】
わたしは美化する。なにもかもを美化する。けむりも藁も灰も枯川も風も。それがまなこの流儀で、わたしはじぶんの視を炎やしながら、拠らないことからのみ、拠ることをつくりあげてゆく。この倍数化のなかにきっとかがやく中途の断面があって、それでこそ美化も倍数化とさだまるのだろう。いいかえれば多いものがうつくしいのだが、倍数化をはずせばそれらはさみしく少なく、めぐりをふくむ一帯のくさむらにすぎない。視の操作は眼下の土、そのなにかの反射までたちのぼらせ、ふえるもののふきあげる湯のような地では、ひとつも浄土をふんでいる気がしない。