運搬
【運搬】
個体が遺伝子を先ざきへ運びあわすための媒介にすぎないとすれば、その運搬においてうつろな身体がいつでも旅相をえがくようになる。荷台いっぱいに川芹を積んで、したたりを走る軽トラがよぎり、運転手はいない。運転席にもただ川がながれていたというべきかもしれない。それでもあらゆるものが逆光にみえる奥にたつと、からみつかれて芹をあるくひとらのいくらかが、遺伝子ではなくまさにことばを次代へ運ぶなかだちとおもえてくる。かれら彼女らのうつわのなかでべつの文法が白根になるそんな時が継がれ、その水にとおく芹がなびくのは、ことばを運ぶ川をねがう夢だろうか。しめったにおいの土手のまなかいにて、くさりなす水泡がゆききしている。