人乃湯
【人乃湯】
おんなのはだかへちかづく夢のかなわないときは、おとこのはだかに代えてでもと、ひとり人乃湯へゆく。もうもうたる湯けむりのなか、だれかれかまわぬ複数がうごめいて、髪をあらったり腕をあらったりしている。からだのほとんどはおとこめいた突兀をえがかない。しゃがむほおずきいろだけが処刑まえのようで、あれらはしゃがむうつくしさの、むしろおんなでもあるのではないか。そういう列なりからとりわけくぐもる穴やかなしい圧縮をみつけ、そのありさまをこわれたわたしとこころすれば、湯にいてとけかかっているだけ、みずからがすこしおんなとなれる。