物語2
【物語2】
むかしは点燈夫のまま死んだものがすくなからず居て、かれらこそがあけがたまでの純粋な夜だった。かれらの夜そのものを数珠つなぎにしようとしたのに町のひろがりだけがそうなって(とおい田園などは放置された)、なさけないきまりしごとののち、かれらはひと晩をつめたく覚醒した。どこに臥したのかはともかく、貼りついて窓によこたわるさかさの感触があった。蛾が舞って住人はあるかなかった。それでも畦のように直交する辻ではたがいの分身の辞儀もおこたらなかった。一揖また一揖。きよわにもかたりあったのだ、(ここは打たれた田)(うでをのばせ)(車軸越しに)。まぼろしにたちこめている霧や、おんなのうすい背後へは眼をつむれないまま朝がしのんでくると、かれらのほそまる虹彩は、ぼやけるあかりの穴をただのくらさへもどすしかなかった。こうしてまつげの不眠がさだまり、ふたたび町には林立の棒ができた。あいだにはおおきな舫い船の錨ものこった。そんなしるしどもが眼の底でかたくなって、かれらは死んでいったのだ、やがてくる江礫の未来さえしらずに。