内側と外貌
【内側と外貌】
おもうことがみずからに内側をつくりだした日は去った。外貌のないものとして、棒にすぎない無差異として、これからは物質をかんがえ、殺伐の身をあまねくひとつへとかためるだけだ。窓辺にかたむきながら、ただ距離をみあげる。鉄鎖一本がしずかに湖心へおりるときにも、関係の塔におぼえかえ、ただ感覚へと反響させてゆく。たしかに全聾者のなす記譜行為にも、そんざいしない聴覚の厚み、鳥影のうつりがあるだろう。全盲者が協力者とたどってゆく詩作のやりとりもまた並行性をもつ。ところがそれらにあこがれることにはなんの内側も外貌もいらないと、きのうだけはたしかめたのだった。