へび
【へび】
東京の「場所」は細部を人界的にくみたてられて、そこをあるくことは鱗をかすめるにもちかい。へびと同道しているおののきを、たまにおとずれてかんじる仕儀となるが、風光など鏡の部分が多く、すぎゆくにつれ無限回からだへシャッターをきられている疲れがたまる。こういうへびの覚醒は、雪ふかい地ではけしておぼえないもので、ひとごみをはずれてむつみあうにも冷血の流儀が要るのではないか。れんあいが流行るとか流行らないとかは、へび的なにしきもようがはだをいろどっている自覚にもとづくのだろうが、東京にあるからだは、風光の鏡にすいとられてきえかかるときがいちばんうつくしい。それらをみるために、なにももちよっていない。微光にとけることなく今日はへびとともにただあるき、「西へ」という方向をひさかたぶりにからだへいれるだけだ。