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報告と伝達 ENGINE EYE 阿部嘉昭のブログ

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報告と伝達

 
 
【報告と伝達】

1)まずは三月六日、北大で開催される映画研究会についてのご案内を。同僚・応先生の名文をご堪能あれ。もちろん院生・研究生にはお誘いあわせのうえご来場を乞います。

「映画における「速さ」と「遅さ」―日中映画の場合」研究会(プログラム案内)

【趣旨】
映画論は、作品の鑑賞や物語の分析、映像表現技巧の確認、社会・時代の背景とのかかわりについての整理、あるいは映画作家がもつとされる美学的側面についての考察といったアプローチに満足しなくなって久しい。今日の映画研究は、研究対象や問題関心によっては程度の差こそあれ、「『シネマ』後」という課題に直面せざるをえない状況下にあるといってよいが、従来のアプローチに距離をとりつつ、研究の視野をより広く、そしてより深く開拓していくこと、これがわれわれの担うべき責務であろう。
本研究会は、新たな視座によって考察を加えられるべき数多くのテーマからひとつ取り出し、映画における速度の問題を取り扱う。映画イメージの回転速度が、一秒間18コマだったり、24コマだったりする。物語を記述する能力、思想・感情を表現する力を高めたとされるグリフィスの編集とエイゼンシュテインのモンタージュが、彼らの作品を構成するイメージたちが事物世界と精神世界を駆け巡る速さにかかわる事柄でもある。映画の歴史に新しい波が押し寄せるたびに、決まってわれわれが新たな相貌をもつ「速さ」と「遅さ」に遭遇する。映画は、発明された日から、速度の問題にかかわってきたが、これからも関わり続けていくものであろう。
日中の映画も、このテーマに無縁なはずはない。1920年代と30年代に、日本と中国の映画がそれぞれ近代化を迎えたとされているが、それはイメージが物事を表象するスピードが速まった事象でもあった。香港の新武侠もの、日本の松竹ヌーヴェル・ヴァーグ、中華圏のそれぞれの地域で起きるニュー・ウェーヴ、日本独特のリミティッド・アニメ……、速いイメージたち、遅いイメージたちを伴うそうした諸々の映画史的事象を前にして、われわれは速度にかかわる事柄について歴史的検証または理論的検討を加えてみようではないか。(科研基盤研究C、課題番号25370155)

【テーマ】 映画における「速さ」と「遅さ」―日中映画の場合

【スピーカー・タイトル】(日本語・中国語による発表は通訳付き、英語による発表は通訳無し)
・周  安華(南京大学)リズムの背後:時間とモダニティ―中国の「現象電影」の速度変奏
・阿部 嘉昭(北海道大学)              黒沢清、遅/速の攪乱者
・周  冬莹(浙江伝媒学院)      希薄と緩慢―賈樟柯映画における運動について
・井川 重乃(北海道大学)    加速/減速する日本映画―北野武『ソナチネ』を例にして

(総合司会 応 雄 〔北海道大学〕)

【質疑応答・総合討論】 発表者・聴講者全員。(使用言語は日本語と中国語、通訳付き)
  
【日時】2014年3月6日(木) 午後14:00~18:00
【場所】北海道大学人文社会科学総合教育研究棟(W棟) W408教室(〒060-0810 札幌市北区北10条西7丁目)
・問い合わせ:北海道大学文学研究科映像・表現文化論(応、tel:011-706-4020) 



2)斎藤久志監督の『なにもこわいことはない』の札幌興行がいよいよはじまります。
於:蠍座
3月4日(火)より公開
3/4(火)〜10(月)12:05、17:30
3/11(火)〜17(月)13:30、19:00
011-758-0501

ぼくが去年、心底惚れた映画。すべてのフレームがすばらしく、それに着目するとあらたなフレーム論にとみちびかれます。「室内」で映画を撮るということは、「内部」の場所に位階と展開をつくること。斎藤監督の緻密な演出は、そうした真実に、完全に行き届いています。

「層」次号では、この『なにもこわいことはない』とミヒャエル・ハネケ監督『愛、アムール』を並列させて、フレーム論をしるしています。ぼくの論考を読む「前提資料」としてもぜひこの傑作に劇場で接してください。ぼくじしんは3月8日(土)か9日(日)のどちらかに行こうかなとおもっています。一緒に鑑賞したいひと(ひさしぶりに飲みたいひと)はぜひご連絡を



3)今号(三月号)の「現代詩手帖」の目次見返しに、ぼくの『換喩詩学』の刊行予告が載りました。編集部が書いてくれたコピーを以下、転記打ちしておきます。

「現在の詩を、文学的にではなく、詩固有の物質的な論理としてとらえる試みだった」(あとがき)。「暗喩詩」から「換喩詩」へ――これまで詳細に論じてこられなかった90年代以降の詩の趨勢を、「換喩」をキーワードに根源的に定義づける。詩の現在に対峙するための詩論集、待望の刊行!



4)今日午前はぼくが顧問をつとめる「北大短歌」第二号のため、その創刊号の書評を書いていました。久石ソナ氏の依頼によるもの。乞うご期待
 
 

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2014年02月28日 日記 トラックバック(0) コメント(0)












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