薄氷
【薄氷】
北大の2013年度出版助成金も受けた初の詩論集『換喩詩学』は、もう先週か先々週の段階で出来上がっていたはずだったのだけど、消費税引き上げまえの、各版元の印刷屋への駆け込みラッシュによる「待ち」、それにタイミングのわるいことに、トラブルによるカバーの刷りなおしまでもがかさなって、なんとギリギリの一昨日、三月二十八日金曜に見本が完成したのだった(ぼくはずっと前に著者校了していたのだけど…)
助成出版は大学当局に「年度末」、つまり三月三十一日(今年の日付でいえばあすの月曜)までに指定部数を書類ともども提出しなければならない。それに遅れたという前例を聞かないし、もしそうなれば大変なことになる。刊行期限が契約事項に入っているから助成取り消しになっても抗弁できないのだった。くりかえすが前例がない。「緊急異常事態」であるのはたしかで、当局も心配するメールをくりかえしていた。
むろん見本ができあがっても、こちらは札幌。通常郵便なら東京からの郵送→到着に中二日かかる。版元の思潮社は緊急事態だからとクロネコヤマトの特別航空便を奮発しようとした。ところがなんとクロネコも消費税アップまえの駆け込み需要が押し寄せて機能ストップ、時限特急郵送を断られてしまったという。
さあ困った。ともあれ次善の策としてかんがえていたゆうパック郵便に担当者がだした。昨日~本日・日曜午前までに届く手筈だったが、まんいち郵便事故があったばあいはすべてオジャンとなる…
昨日一日はやきもきしながらも、なしのつぶてだった。ゆうパックは民間とちがい、どこまで来ているかの追跡調査サーヴィスがない。もしも今日中に届かなかった場合は、急遽、編集の亀岡さんが明日、出来たての拙著を抱えて北海道行きの飛行機へ乗り込むという。いよいよ大変なことになった。こんな時限サスペンスは実人生で経験したのがはじめてだ。どうなる? どうなる?
むろんこのポストがあるということは、そう、ついにいまさっき、本が手許に届いたのだったァ!!!!!!!!!!(前置きが長くて大袈裟でしたねえ笑)。実人生でこれほど安心したことはない。亀岡さんの緊急出張もこれでなくなった。じつに、じつに、じつに、よかった。(もうほとんど泣いている…)
ということで、明日の年度末日に、当局へしずしず拙著を納めにまいります。三月三十一日が日曜でなくてホントよかった… 薄氷を踏むとは、まさにこのことでした。以上、ご報告まで
(とはいえ昨年度は同僚のM先生がことしのぼくとほぼおなじ経験をなさっている。まあぼくのばあいは、エラぶるわけではないが、「消費増税」がネックだったのだけど)