春感
【春感】
春情ほどつよくない春感といったものをかんがえる。ひとがうるんだりにじんだりするあいだを、若駒がやわらかくすりぬけてゆくようなおぼえだ。くべつがなにごとにもなくなってゆくさみどりをことばにもうばい、助詞をただの音素へおとしめて、かなたとこなたにはfor saleをたちあげる。瞑目と開眼、それらをともにうらがえすため、とうめいが林立してくる位置こそを越えて売りはらうのだ。うらがなしいの「うら」は心としるすが、からだの裏なのかこころの浦なのか。ひとの胸がみえなくなってくる。ひきつづきろうかんや柱もゆけ、すきまのかるい川面を。