馬酔木
【馬酔木】
こころをやむと、花から視線をかんじるだろうが、ちいさな白壺が房となってうつむく花あしびにならうれいとさいわいをおぼえるだろう。同一性によってさだまってゆく、くうきの澱のひくさがあって、そのひくさがさらに下部をしめすことで、むすうのしずけさが地面へひろがる。むかいつつ下をたたえる花あしびはおのれの二層の境に花ひらくのだ。かたちの細枝も花序も、草をはむ馬くびのちいさなまねだから、みるだけで馬がおのれを酔わすのかもしれない。まよなかの馬がくびで障子をひらかぬよう生垣にあしびを咲かす家。しろやむらさきで敷地はうつくしいほどあいまいだが、たしかに下部からくみたてられ奥が柱だつ。そのあしびの北限が本州なのがさみしく、画をたのしむと南の形態に酔わされる。酔わされるにあるよわさ。とりわけ花あしびの女人臭は、下部のとけあう盆地をささえるだろう。北人の眼だけが鹿となってのこされる。